ピラティスで使う足関節の解剖・バイオメカニクスまとめ

足関節は日常的に歩いて生活する私たちにとって、体重が大きく加わる負担のかかりやすい部位です。

そのため、外反母趾や扁平足、ハイアーチなど足関節や足部の変形、機能不全に陥ってしまう場合も少なくありません。

また、足関節自体に自覚的な症状や変形がなくても、機能不全が隠れていて膝関節や股関節などの症状につながっている場合もあります。

なので、ピラティスでも足関節や足部に視点を当ててエクササイズを指導することが重要です。

ただ、足関節は他の関節に比べて構造が複雑で、見るべき部位が多いので、機能解剖を理解していないとエクササイズを指導する際にどう指導してよいかわからないかもしれません。

本記事では、足関節や足部の機能解剖から構造や機能を考え、どう動かすのが良いのかを解説していきます。

目次

足関節の機能解剖

足関節は大きく分けると、距腿関節と脛腓関節の2つから構成されています。

また、足関節は多くの骨で構成されているため、関節以外の骨についても理解を深めておく必要があります。

それぞれの機能解剖を解説していきます。

距腿関節

脛骨内果関節面、脛骨下関節面、腓骨外果関節面とそれに対応する距骨滑車から構成されています。

この関節の特徴としては、距骨滑車と対応する脛骨と腓骨で形成されるほぞ穴(果間関節窩)構造があること。

内果は外果の上前方に位置しています。

また、脛骨近位端に対して遠位端は約20~30°外捻しており、内外果を結んだ線は膝関節からみると外旋位となっています。
この構造により、足関節の内反は骨性の制限が弱く不安定であり、外反は骨性の制限が強く安定性が高いことがわかります。

距骨滑車は前方が後方より3〜5mm広くなっており、背屈時には距骨滑車が後下方へ移動するため、ほぞ穴の幅が広がることで背屈が可能となっています。

この際、背屈時に腓骨は開排・挙上・内旋、底屈時に集練(開排とは逆に締まる方向)・下制・外旋へ動いています。
逆に言えば、遠位脛腓関節に制限があるとほぞ穴が広がらず、背屈にも制限が出現する可能性があります。

また、背屈時には距骨滑車が脛腓関節に挟まれる形となり、骨性な安定性が得られ、底屈時には反対に骨性な安定性に乏しいと言えます。

距腿関節の関節軸は、内外果の尖端を通り、距骨体を通っています。
外果は内果よりも後下方に位置するため、外果から内果を貫く関節軸は前上方に傾いています。
(前額面で約10°上方、水平面で約6°前方)

まとめると、以下のように運動が起こります。

・背屈=距腿関節背屈・外転・回内+腓骨開排・挙上・内旋
・底屈=距腿関節底屈・内転・回外+腓骨集練・下制・外旋

脛腓関節

腓骨が脛骨の外側へ結びついてそれぞれ近位と遠位の脛腓関節を形成しています。

この両骨の連結を補助しているものが下腿骨間膜と呼ばれるもので、足関節・足部に付着する多くの筋群の付着部となっています。

また、脛腓関節は近位脛腓関節と遠位脛腓関節に分けられ、近位は膝関節、遠位が足関節に関わります。

近位脛腓関節は、膝関節の下部外側に位置する滑膜関節であり、脛骨外側顆の後外側面と腓骨頭で形成されます。

前後の靭帯によって強固な安定を得ており、以下の要素で構成されています。

<近位脛腓関節の安定性に関わる要素>
・関節包靭帯
・膝窩筋腱
・遠位脛腓関節

遠位脛腓関節は、脛骨の凹状の腓骨切痕と腓骨遠位の凸状の内側面との連結によって形成されます。

近位脛腓関節と同様に、靭帯によって強固な安定性を得ており、以下の要素で構成されています。

<遠位脛腓関節の安定性に関わる要素>
・骨間靭帯
・前脛腓靭帯
・後脛腓靭帯

踵骨

踵骨は歩行時において最初に接地する部位です。

踵骨は距骨と距骨下関節を形成しており、ここの制限でその後の歩行が大きく変わってくるので、最初に評価すべき部分でしょう。

<評価のポイント>

  • 背臥位または腹臥位での距骨下関節の回内外の評価
    (距骨を左右から指挟み、踵骨を動かして評価する)
  • 立位での距骨下関節の評価
    (左右への荷重やしゃがみ込み時の踵骨の変化を評価)

荷重下(CKC)においては、脛骨が距骨下関節の運動方向に影響を与えています。

脛骨内旋→距骨内転・底屈→踵骨外反
脛骨外旋→距骨外転・背屈→踵骨内反

非荷重下(OKC)においては、距骨は脛骨の延長として機能するため、以下のように作用します。

脛骨内旋→踵骨外反・外転・背屈
脛骨外旋→踵骨内反・内転・底屈

このような運動連鎖を考慮して、踵骨の外反制限があるということは?などと考えてみてください。

また、距骨下関節においてはニュートラルポジションを探すことが重要であり、これがわからないとそもそも踵骨がどちらに偏っているかも判断できません。
ニュートラルポジションの探し方に関しては以下を参考にしてみてください。

①. 外果の上下を触診しつつ、距骨下関節を動かして前額面から見て上下が平行になる位置を探す
②. 距骨を左右から挟むように触診しつつ、踵骨を回内外へ動かし触診している部分に偏りがない位置を探す
 (過剰に回外すると外果側で触れている距骨が飛び出てくる、過剰に回内すると内果側で触れている距骨が飛び出てくることが分かるのでその中間を探す)

舟状骨

舟状骨は内側縦アーチの一番上にくる部分で触れることができます。

この時、舟状骨の前にある内側楔状骨も一緒に触診します。
内側楔状骨よりも舟状骨が下方へ落ち込んでいる場合は、内側縦アーチの低下を意味しています。

ただ、アーチが落ちているからといって単純にアーチを挙げるようにインソールなど処方しても上手くいかないことが多いです。

それは、踵骨との関係を評価していないから。

踵骨が回内していると、舟状骨・内側楔状骨も一緒に落ち込んでしまいますので、この場合はまず踵骨を回外位へ持っていく必要があるわけです。

また、舟状骨には後脛骨筋が付着しています。
後脛骨筋と腓骨から内側楔状骨、第1中足骨へ付着する長腓骨筋とでクロスサポートメカニズムを形成しています。

クロスサポートメカ二ズムとは、長腓骨筋と後脛骨筋が停止部で交差していることから互いに内外側へ足部を引っ張り、それによって底屈時の足部の安定化に貢献しているという機構です。

足関節は背屈位で脛骨と腓骨間に距骨がはまって安定性が高まり、逆に底屈位では骨性の安定性が乏しいので、筋肉によって安定性を高める必要があるということです。

舟状骨をはじめとする内側縦アーチの低下は後脛骨筋、長腓骨筋の働きを不十分にするため、この機構と関連して覚えておくと良いです。

つまり、ポイントとなるのは以下の3点です。

・ 内側縦アーチが破綻しているかどうか
・ 踵骨と舟状骨、内側楔状骨の関係性はどうか
・ クロスサポートメカ二ズムが機能できる状態かどうか

立方骨

立方骨は足関節の外側で、踵骨の前に位置しています。

主に左右方向への動きに関連があります。

簡単な評価としては、立方骨が挙上している場合は荷重が不十分、立方骨が下制している場合は外側への荷重が優位になっていることが示唆されます。
下制している場合、過剰なストレスとなっていることが多いので、圧痛所見も認めることがあります。

立方骨が下制していると腓骨も下方へ落ちている場合があるので、一緒に評価しておきましょう。

また、踵骨と立方骨との関連も重要です。

踵骨と立方骨は踵立方関節を形成し、距舟関節とともにショパール関節を成しています。

ここで重要となるのが、踵骨の位置関係によって柔軟性と固定性が変化するという点です。

距骨下関節が回外位となると、踵骨は内反、立方骨は回内・前方傾斜し踵立方関節は締まりの位置になります。
距骨下関節が回内位となると、踵骨は外反、立方骨は回外・後方傾斜して緩みの位置となります。

つまり、ポイントとなるのは以下の2点です。

・ 立方骨が挙上しているのか、下制しているのか
・ 踵骨と立方骨の位置関係、締まりの位置か緩みの位置か

中足骨

特に重要となるのが、第1中足骨と内側楔状骨から成る第1列。

第1中足骨が背屈位で荷重すると、下腿は外旋
第1中足骨が底屈位で荷重すると、下腿は内旋

このように連鎖します。

第1中足骨底と骨頭を触診して他動的に動かしてどちらに制限があるのかで、背屈位か底屈位か判断できます。

これに以下の筋群の影響を考慮するとより正確に評価できます。

・ 長母趾屈筋
・ 長母趾伸筋
・ 足底腱膜
・ 短母趾屈筋
・ 母趾内転筋

例えば、第1中足骨が背屈方向に制限があるとして、足関節背屈位と底屈位でそれぞれ中足骨の可動性を評価します。

背屈位で制限が強くなるなら長母趾屈筋、底屈位で制限が強くなるなら短母趾屈筋による影響が強いと予測ができます。

足関節の特徴

ここまでの機能解剖も踏まえ、足関節には以下の2つの特徴があります。

それぞれ詳しく解説していきます。

唯一地面と接する部分

「足」は唯一地面と接しているという当たり前のことだが、それを認識しているかどうかが大事。

唯一地面と接しているということは、足部の状態によって動作が規定されてしまう可能性があるということです。

どういうことかと言うと、例えば足関節に回内制限があると回外優位で歩行しなければいけません。
そうなると、外側へ荷重して歩行する傾向が強くなり、下肢外側にある腓骨筋、腸頸靭帯、中臀筋、大臀筋などの緊張が高まり、それらへの負担が高くなってしまいます。

また、足部は多くの骨や筋肉によって構成されています。
どうしてこんなにも多くの骨や筋肉によって構成されているかというと、分節的に可動域を変化させて様々な場面で柔軟に対応する必要があるからです。

平坦な道もあれば不整地もあり、走ったり大きな力を発揮したりとあらゆる環境に対応することが足部には求められたので、このような形態をしていると考えられます。

つまり、柔軟な対応ができなくなった時、可動域が制限されて一定のパターンでしか動けないような形態になると機能障害が発生するというわけ。

感覚受容器が豊富

メカノレセプターと呼ばれる足底の感覚を伝える受容器が豊富に分布しています。

これによって、常に変化し続ける身体重心の動揺と床面との関係につき、床反力として求心性情報を提供されることで、静的・動的なバランスが保たれています。

触覚、圧覚、振動知覚、関節位置覚、運動覚のほかに、筋の張力、筋の伸張性速度や長さの変化を受容し、求心性に情報を伝達しています。

このことから、皮膚や関節包、筋腱の状態によって足底からの感覚情報が規定され、その感覚情報によって運動が規定されることが言えます。
足部には、細かい筋肉や関節が多く存在しているため、それだけ感覚情報から受ける影響も大きいことが考えられますね。

つまり、足部は構造的に制限があっても、筋や皮膚の障害によって感覚情報が適切に入力されなくても、その後の運動を規定してしまうことが言えます。

普段、私たちでも靴の中に小さい石が入っていたりすると歩き方も変化しますよね?
わずかな変化であっても敏感に感じ取り、運動へ影響を及ぼすだけの機能を有していることが言えますので、適切に感覚情報を感じることができる状態なのか?という視点で考えることが必要になります。

足関節の構造的な特性

足部は柔軟に可動性を変化することができると言いましたが、言い換えると他関節の制限の結果として足部で代償してしまうこともあり得るということ。

足部は身体全体として見ると、可動性に富んでおりモビリティの役割を担っています。
隣接関節のスタビリティを受けて、モビリティ関節として可動域を変化させ、筋力を発揮し、動作へとつなげることができます。

足部自体を見ても、距腿関節、距骨下関節、リスフラン関節、ショパール関節などなど、多くの関節が存在するため、それらを複合すると可動性に富んだ部位ということもわかるでしょう。

しかし、可動性に富んでいるがために他関節が硬く制限されると、それを代償するために可動性を変化させて対応することが考えられます。
これは他関節の動かない部分をフォローするための代償なのでメリットとも言えるのですが、慢性的にそのような身体の使い方となってしまうと、そのパターンで足部が適応して可動域に制限ができてしまいます。

そうなると、上述したモビリティースタビリティの関係が逆転したり、地面に対して可動性を変化して対応できずに過剰な負担となる、他関節の動きに対して対応できずに過剰な負担となることが考えられます。

つまり、可動性に富んで柔軟に対応できる能力を持っていますが、メリットにもデメリットにもなりえるのです。

足関節の機能解剖から考える関節運動

ここまでの内容を踏まえ、足関節はどのように動くのが理想なのか。

機能解剖から考える理想的な足関節の運動について解説します。

足関節の背屈

おさらいしますと、背屈=距腿関節背屈・外転・回内+腓骨開排・挙上・内旋でしたね。

外果と内果の位置関係から、遠位脛腓関節が近位に比べて20~30°外捻している、内果に比べて外果が後下方に位置していることを考慮すると、この遠位脛腓関節に対して距骨滑車を適合させる必要があります。

まず、外捻していることからやや外転位へ誘導して水平面での軸を合わせます。

回内させることで、前額面での軸を合わせます。

これで脛腓関節に対して距骨滑車の向きを合わせることができたので、後は距骨と脛骨・腓骨の相対的な位置関係を考慮しつつ動かすだけです。

具体的には、腓骨を外上方へ押しつつ背屈運動をする。
この時、腓骨は内旋するので外果の後方から押すようにするとより良いですね。

さらに、下腿前傾と距骨滑車の後方への動きを考慮し、下腿前傾(膝関節屈曲)を引き出しつつ、距骨を足関節の後方へ押し込むようにします。

まとめると以下の通りです。

1.距腿関節外転・回内へ誘導
2.腓骨後方から外上方へ誘導
3.膝関節屈曲方向へ誘導しつつ、距骨を後方へ押し込む

足関節の底屈

おさらいしますと、底屈=距腿関節底屈・内転・回外+腓骨集練・下制・外旋でしたね。

底屈の場合も背屈と同様に、外果と内果の位置関係を考慮します。

背屈とは逆でやや内転位へ誘導して水平面での軸を合わせます。

回外させることで、前額面での軸を合わせます。

これで脛腓関節に対して距骨滑車の向きを合わせることができたので、後は距骨と脛骨・腓骨の相対的な位置関係を考慮しつつ動かすだけです。

具体的には、腓骨を内下方へ押しつつ底屈運動をする。
この時、腓骨は外旋するので外果の後方から押すようにするとより良いですね。

さらに、下腿後傾と距骨滑車の前方への動きを考慮し、下腿後傾(膝関節伸展)を引き出しつつ、距骨を足関節の前方へ引き出すようにします。

まとめると以下の通りです。

1.距腿関節内転・回外へ誘導
2.腓骨後方から内下方へ誘導
3.膝関節伸展方向へ誘導しつつ、距骨を前方へ引き出す

まとめ

  • 足関節は距腿関節と脛腓関節の2つから構成されている
  • 距腿関節は外果が内果に対して30°外旋、10°下方に位置する
  • 背屈=距腿関節背屈・外転・回内+腓骨開排・挙上・内旋、底屈=距腿関節底屈・内転・回外+腓骨集練・下制・外旋
  • 踵骨はCKCでは脛骨内旋→距骨内転・底屈→踵骨外反、脛骨外旋→距骨外転・背屈→踵骨内反、OKCでは脛骨内旋→踵骨外反・外転・背屈、脛骨外旋→踵骨内反・内転・底屈
  • 舟状骨は内側縦アーチの一番上で、内側楔状骨が舟状骨より低下しているとアーチの低下を意味する
  • アーチが低下しないように、後脛骨筋と長腓骨筋が足底から交差するように支えている
  • 立方骨が挙上している場合は荷重が不十分、低下している場合は荷重し過ぎの場合がある
  • 距骨下関節が回外位となると、踵骨は内反、立方骨は回内・前方傾斜し踵立方関節は締まりの位置となり、距骨下関節が回内位となると、踵骨は外反、立方骨は回外・後方傾斜して緩みの位置となる
  • 第1中足骨が背屈位で荷重すると下腿は外旋し、第1中足骨が底屈位で荷重すると下腿は内旋する
  • 足部は唯一地面と接する部位なので、足部の状態次第で歩行などの動作が決まってしまう
  • メカノレセプターが豊富にあり、感覚情報の感度が高い
  • 足関節、足部は可動性が大きいモビリティ関節なので、他の関節との関係も踏まえ全身として考えることも重要
  • 足関節の背屈、底屈は足関節の構造から考え、距骨滑車の向きを合わせ、腓骨や膝関節の動きなどを踏まえて動かす

本記事では、足関節の機能解剖から重要な構造や機能を解説しました。

足関節は距腿関節と脛腓関節の2つから構成されていますが、踵骨や舟状骨、立方骨など多くの骨と関節の構造や動きも考慮して考えないといけず、他の関節に比べて複雑な関節と言えるでしょう。

また、メカノレセプターも豊富で感覚情報に対する感度も高い部位なので、各関節の動きを十分に発揮できることで感覚情報も適切に処理できると考えられます。

そのためには、見るべき部位は多いですが、1つ1つの骨や関節を評価した上で運動を指導しないといけません。

ピラティスにおいても足関節の角度や位置、足部をつけるかどうかなどにまでこだわって指導することで効果も大きく変わります!

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