ピラティスインストラクターや運動指導者の方、こんにちは!
Nピラティス柏店保坂です!
皆さん、
ピラティスで良く使われる
ラテラル呼吸(lateral breathing)
をご存知でしょうか?
こちら、ピラティスでとてもよく使われる呼吸法です!
日本語では「胸郭の側方呼吸」や「胸の横の呼吸」とも呼ばれます。
本日はこのラテラル呼吸についての基礎知識&解剖学的なポイントについて解説をしていきます。
ラテラル呼吸ができない理由を解剖学から

ピラティスにおける「ラテラル呼吸(lateral breathing)」
これは単なる呼吸法ではなく、
身体のコアを安定させながら動くための「基礎の基礎」です。
ラテラル呼吸とは、
息を吸うときに胸郭(あばら骨)を横方向に広げ、吐くときに閉じる呼吸法です。
つまり、お腹を膨らませるのではなく、
胸の横と背中側を使って呼吸するイメージです。
しかし、
指導現場では
「胸が広がらない」
「背中が動かない」
「吸ってもお腹がふくらむ」
といった悩みをよく聞きます。
なぜラテラル呼吸ができないのか?
今回は、解剖学と運動学の視点から5つの理由を整理し、
指導者としてどんなアプローチができるのかを具体的に掘り下げていきます。
理由1:肋間筋がうまく働いていない
肋間筋の役割
肋間筋(外肋間筋・内肋間筋)は、
肋骨と肋骨の間に張り巡らされ、
吸気・呼気の際に肋骨を持ち上げたり下げたりする呼吸補助筋です。
ピラティスで意識するラテラル呼吸では、
外肋間筋が肋骨を「横方向」「後方」に拡げる役割を担っています。
つまり、
肋間筋が柔軟に働くことが、胸郭の広がりを生む前提条件です。


弱いとどうなる?
肋間筋が機能していないと、
呼吸の動きが
「前方(胸の前側)」
「腹部」
ばかりに偏ります。
その結果、背中や脇の下(中腋窩線あたり)の広がりが感じられず、
「胸が動かない」
「背中に息が入らない」
状態になります。
これは、デスクワークでの前屈み姿勢や肋骨の固さ(特に第7〜10肋骨)により起こりやすい現象です。
改善のステップ
まずは「胸郭を動かす感覚」を取り戻すことが大切です。
おすすめは「胸郭モビライゼーション呼吸」。
現代人は巻き肩や前屈み姿勢になることが多いため、
胸郭が圧迫を受け柔軟性が低下しやすいです。
両手で肋骨を側方からしっかり圧迫しながら息を吐く
風船を横に膨らませるイメージでしっかり息を吸う
膝下胸郭の動きを出してあげることにより、
肋間筋の柔軟性改善&出力向上、胸郭の柔軟性改善につながります!
理由2:横隔膜の動きが制限されている
横隔膜の役割
横隔膜は「吸気の主働筋」。
吸うたびに下がり、
吐くと上がるドーム状の筋肉です。
ラテラル呼吸では、横隔膜の上下動を「腹圧の安定」と「胸郭の広がり」に結びつけることがポイントです!
この連携が取れないと、
吸っても胸が上がるだけで「横に広がらない」呼吸になります。
制限されるとどうなる?
横隔膜の動きが制限されると、
腹式呼吸か胸式呼吸に偏ります。
結果として「ラテラルに吸えない」「コアが抜ける」「呼吸で骨盤が動く」などの現象が起こります。
横隔膜は以前下の記事でも紹介したようにドーム上の筋肉です。

リブフレアや反り腰さんは、
ドームの前側が開いてしまって横隔膜の動きが制限されやすい傾向にあります

改善のステップ
おすすめはカウのポーズでの深呼吸
前側のドームをしっかり閉じた状態での呼吸を行うことによって、
横隔膜を正しいポジションで使う練習になります!
理由3:腹横筋との協調が取れていない
腹横筋の役割
腹横筋は「天然のコルセット」。
毎回の記事で横隔膜の大事さはかなり伝えているとは思いますが、
やはりここでも大事です笑
吐く息に合わせて収縮し、腹圧を高め、
内臓を支えながら脊柱を安定させます。
ラテラル呼吸では、
息を吐く際は腹横筋でしっかり腹圧を高められるのが理想です
弱いとどうなる?
腹横筋のコントロールが弱いと、
吐いているのにお腹がポコッと前に出ます。
主に腹直筋がメインとして働いている時によくみられる状態です!

改善のステップ
おすすめは「呼吸に合わせた腹横筋トレーニング」。
仰向けで膝を立て、
吸気で胸郭を横に拡げ、
吐く息で下腹を軽く引き込みながら骨盤底を引き上げる。
腹横筋が呼吸の一部として自然に働くことを目指します。
理由4:胸椎の可動性が低い
胸椎の役割
胸椎は、肋骨と連結し、
胸郭の拡がりを支える重要な部分です。
ラテラル呼吸では、胸椎の伸展・回旋がスムーズに起こることで、
肋骨が自然に動くスペースを作ります。
硬いとどうなる?
胸椎が固いと、肋骨は動けません。
呼吸が「首」「肩」だけで起こり、
肩が上がる浅い呼吸になります。
特にデスクワークやスマホ姿勢で胸椎が後弯している人は、
背中が丸く、肋骨が下向きに固着しやすいです。
結果、ラテラル方向への拡張が困難になります。

改善のステップ
おすすめは「胸椎エクステンション with タオル」。
タオルや布団などを肩甲骨の間に置いて仰向けになり、
腕を頭上に伸ばして深呼吸します。
このとき、吸気で胸を開き、吐気で肋骨を軽く締める。
胸椎の伸展可動性を高め、
ラテラル呼吸に必要な胸郭のしなやかさを取り戻します。
理由5:姿勢パターンが呼吸を制限している
姿勢と呼吸の関係
ラテラル呼吸は「姿勢」に大きく影響を受けます。
骨盤が後傾していると、肋骨は後下方へ倒れ、
胸郭は閉じた状態に。
反対に、胸を張りすぎると肋骨が前方へ開き、
後方の動きがなくなります。
どちらのタイプもラテラル呼吸が難しくなります。

姿勢が悪いとどうなる?
骨盤と肋骨のアライメントが崩れると、
横隔膜が正しく収縮できません。
結果として「どこで吸えばいいのかわからない」という状態に‥‥。
特に肋骨のフレア(前方開き)は、
呼吸のベクトルを前にしか向けられず、
背中に空気を送る感覚が消失します。
改善のステップ
おすすめは「エロンゲーション下での呼吸の学習」。
エロンゲーションとは上下に伸びた状態のこと。
反り腰や巻き肩は例えるなら、
片方にシワが寄って潰れてしまっている状態。
エロンゲーションを意識してあげると、シワがよって潰れた部分が伸び、
大まかな姿勢の偏りが修正されます。
その良いポジションで呼吸を入れてあげることにより、
普段膨らみを感じにくい部分に対して呼吸を入れてあげるイメージです!
ラテラル呼吸ができない!を解決するまとめ!
ラテラル呼吸ができない背景には、
単なる「呼吸の練習不足」ではなく、
胸郭・横隔膜・姿勢・コアの連携不全があります。
指導のポイントは、
息をどこに送るか漠然としたイメージのみで教えるよりも、
胸郭をどう動かせるかを導くこと。
動きの観察では、
肋骨の広がる方向・背中の動き・首や肩の緊張などをチェックしましょう!
ラテラル呼吸は、コアの安定と背骨の自由度をつなぐ“橋”です。
呼吸の質を上げることで、
ピラティスのすべての動きが格段に変わります。
FAQ:ラテラル呼吸に関するよくある質問
Q1. お腹が動いてもいいですか?
A. 完全に動かないわけではありません。
横隔膜が下がる分、自然な腹部のわずかな膨らみはOKです。
ただし、腹圧が抜けるような大きな動きはNGです。
Q2. ラテラル呼吸は常に意識すべき?
A. 基礎練習では意識的に行いますが、
最終的には“自然にそうなっている”状態が理想です。
動きと呼吸が分離しているうちは、トレーニング段階です。
Q3. 背中に息を入れる感覚がわかりません。どうすれば?
A. 壁に背中を軽く当てて呼吸練習をすると、
「背中が押される感覚」をつかみやすくなります。
また、四つ這いで脇の下や背中を意識するのも有効です。
Q4. クライアントが肩呼吸になってしまう場合の指導法は?
A. 肩や鎖骨周りの過緊張を先にリリースし、
その後で「肋骨に息を送る」感覚を触覚的に導きます。
例えば、肋骨の側面に軽く手を添えてあげると良いでしょう。