中臀筋・小臀筋の解剖学〜ゼロからわかる解剖学〜

目次

中臀筋・小臀筋の解剖学的特徴

中臀筋・小臀筋はお尻の筋肉で、股関節を安定させる重要な筋肉です。

特に

・片足立ちが安定しない

・歩きが横にふらつく

・太ももの外が張りやすい

・股関節の不調が生じやすい

場合は、これらの中臀筋・小臀筋がうまく使えていない場合が多いです。

特に立っている姿勢や歩行中に体を安定させてくれる働きがあります。

他にも、股関節に不調がある場合は、これらの筋肉が弱っている場合が多いです。

論文でも、

変形性股関節症群の患側の大臀筋、中臀筋、小臀筋において、対側および対照群に比べ統計的に有意な筋量の減少が確認され、違いは変形性股関節症の重症度と関連していた。

Hip abductor muscle volume in hip osteoarthritis and matched controls(Zacharias 2016)

と報告されています。

股関節は

  • 靭帯や関節唇(関節の周りにある軟骨)などの静的安定性
  • 筋肉による動的安定性

によって安定します。

変形性股関節症や臼蓋形成不全などの静的安定性が機能しにくくなっている場合、動的安定性が重要になってきます。

では、実際に中臀筋・小臀筋はどこに付いていて、どんな時に筋肉が働くかを理解していますか?

解剖の知識を理解していれば、

  • どんなエクササイズが効果的で
  • どんな代償動作が出やすいのか

まで考えることができます!

今回は中臀筋・小臀筋を解剖から理解し、明日から使えるPointをお伝えします!

中臀筋・小臀筋の起始停止は?

まずは、中臀筋・小臀筋がどこについているのかを確認しましょう!

まずは、簡単に位置関係を理解しましょう!

大臀筋が一番表層にあります。

そのすぐ下にあるのが中臀筋です。

さらにその下にあるのが、小臀筋や深層外旋六筋(梨状筋など)と言われる筋肉です。

大まかに位置関係を理解したところで、それぞれの筋肉について解説していきます!

まずは、中臀筋から解説します!

【起始】

腸骨外側の前臀筋線及び後臀筋線の間

【停止】

大転子外側面、大転子の後面

【作用】

前部:股関節屈曲・外転・内旋

後部:股関節伸展・外転・外旋

まとめると、腸骨の外側〜後ろから大転子についています。

基本的な作用としては、股関節の外転が有名ですが。

さらに細かく見ると、

中臀筋は前部繊維と後部繊維に分かれていて、

前部→屈曲、内旋

後部→伸展・外旋

です。

繊維ごとの作用に関しては、中臀筋を横から見ると理解しやすいです!

筋肉は収縮すると、起始と停止を近づけるように働きます。

そのため、

前部は屈曲や内旋するように働き

後部は伸展・外旋するように働きます。

論文では、

中臀筋の後方繊維は、荷重位では運動方向によらず収縮する。

健常成人男性における非荷重位および荷重位での中臀筋前部・中部・後部繊維の作用比較(遠藤 2018)

と言われています。

特に後部繊維は関節を安定させるため(求心位)に重要になります。

次は小臀筋についてです。

【起始】

腸骨外側の前臀筋線の前方

【停止】

大転子前面、関節包

【作用】

前部:股関節屈曲・外転・内旋

後部:股関節伸展・外転・外旋

小臀筋は中臀筋のさらに深層にある筋肉です。

この筋肉は中臀筋の後部繊維と同様に股関節を安定させる(求心位)重要な筋肉です。

また、この小臀筋は関節包に付着するのが特徴です。

関節包というのは、関節を覆っている袋のようなものです。

小臀筋はこの関節包を引っ張り、関節を動かした時の詰まりを防いでくれます!

股関節を動かした時に、つまり感がある方は小臀筋を動かしてみましょう。

実際に中臀筋・小臀筋に触ってみよう!

解剖を理解したところで、次は実際に中臀筋・小臀筋を触ってみましょう!

筋肉の起始・停止と走行がわかった上で、実際に筋肉を触ると筋肉をより詳しく理解することができます。

実際の体では、

  • 皮膚の上から触れる必要がある
  • 筋肉が何層にもなっており、直接触れない筋肉がある

筋肉をいきなり触ろうと思っても、人によって体や筋肉の大きさは異なります。

最初は、骨を指標にすることが重要です!

では、中臀筋から触診していきましょう!

中臀筋は前部・後部に分けて触ってみましょう。

まずは前部繊維から。

前部繊維は、シンプルに足をまっすぐ伸ばした状態で、外転の動きで確認しましょう。

大転子よりも指2〜3本分頭側に手を置き、触れる筋肉が中臀筋の前部繊維です。

次に後部繊維です。

後部繊維は大転子からPSIS(上後腸骨棘)付近まで筋肉があります。

そのため、PSISを指標にすると触知しやすくなります!

後部繊維は伸展作用もあるため、伸展位での外転で後部繊維を確認します。

次は小臀筋を触ってみましょう!

小臀筋は、股関節の内旋で触知しやすいです。

股関節を曲げて、踵を上にあげる(股関節を内旋させる)と押し上げてくる筋肉が小臀筋です!

中臀筋・小臀筋のストレッチ方法

では、次はストレッチ方法です。

中臀筋・小臀筋をストレッチした方がいい人は、

・変形性股関節症

・股関節が詰まりやすい

・太ももの外側が張りやすい

です。

論文では、

・立脚期初期において、股OA患者は小殿筋後部線維の活動が健常者と比較して有意に高値であり、小殿筋前部線維のピーク値は高くなる傾向を認めた。(1)

・年齢が上がるにつれて大転子滑液包炎、中殿筋と小殿筋の腱障害と萎縮が増加した(2)

(1)Comparison of gluteus medius and minimus activity during gait in people with hip osteoarthritis and matched controls(Zacharias 2019) 
(2)Prevalence and pattern of gluteus medius and minimus tendon pathology and muscle atrophy in older individuals using MRI(Andrew 2015)

簡単に説明すると、小臀筋や中臀筋は年齢とともに筋肉が萎縮し、代償的に筋活動が大きくなる。

特に変形性御関節症の場合、より多くの負担がかかります。

適度なストレッチをして、筋肉を良い状態にすることが重要です。

では、まず中臀筋のストレッチから。

大臀筋と一緒にお尻の筋肉を伸ばしていきましょう!

背中が丸まらないようにするのがPoint!

次は小臀筋です!

股関節屈曲位での外旋および股関節伸展位での内旋にて小殿筋が伸張される

小殿筋の組織弾性が股可動域に与える影響について(為沢 2018)

小臀筋は、

  • 股関節屈曲位での外旋
  • 股関節伸展位での内旋

で伸張されるとの報告があります。

今回お伝えするストレッチ方法は簡単!

うつ伏せで、股関節から足を回すだけです!

このストレッチは変形性股関節症の方も痛みなど少ない方法なのでおすすめです!

中臀筋・小臀筋のエクササイズ

では、エクササイズ方法もご紹介します!

まずは、中臀筋から!

シンプルに外転運動で鍛えましょう!

骨盤は水平に維持することで、中臀筋を鍛えやすくなります。

今回は特に股関節伸展位で後部繊維をメインに鍛えています!

屈曲角度を変えて、繊維ごとに鍛えるのもGood!

次は小臀筋です!

小臀筋は股関節屈曲位での内旋で鍛えましょう!

中殿筋に対し小殿筋を優位に鍛えるための負荷量としては,最大筋力の20%にあたる低負荷で筋力強化訓練を行うことが良いと考えられる。

等張性収縮における小殿筋筋活動と中殿筋筋活動の比較(室伏 2016)

小臀筋は股関節の深層にある筋肉です。

強い負荷で運動してしまうと、中臀筋などの大きな筋肉の活動が大きくなります。

そのため、小臀筋を鍛える際は、低負荷高頻度で鍛えるのがPointです!

最後に

解剖の知識があることは大きな武器です。

解剖を理解しているとエクササイズ指導の質もグッと上がります。

実際の触り方やコツなどが知りたい方は、ゼロからわかる解剖学セミナーでお待ちしています!

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