ピラティスで使う膝関節の解剖・バイオメカニクスまとめ

膝関節の悩みは本当に多岐にわたります。

痛みや動きの悪さだけでなく、O脚やX脚など見た目の悪さなど、ピラティスで解決すべき課題も多いです。

このように問題が多いので、単純に膝の筋トレをしましょう!という考え方では中々上手くいかないこともあるはず。

そこで重要となるのが、膝関節や筋肉の機能解剖の理解です。

機能解剖を理解した上でピラティスを実践することで、ちゃんと効かせたい場所に効かせるキューイングやエクササイズの選択ができるようになります。

また、そもそもどういったエクササイズを選択するべきかという視点も大きく広がることでしょう。

本記事では、膝関節の構造や重要な筋肉の機能解剖から、どんなことが考えられるか、どう活かすべきかを解説します。

目次

膝関節の解剖学的構造

膝関節は大きく分けて2つの関節に分けることができます。

どちらも膝関節の動きにおいて重要な関節なので、一括りに考えず、それぞれ分けて考えるようにしましょう。

大腿脛骨関節

大腿脛骨関節とは、大腿骨と脛骨の2つの骨から構成される関節のことを指します。

1軸性の螺旋関節であり、屈曲・伸展に伴い、転がり運動と滑り運動が起こるのが特徴です。

股関節や足関節と比べ、関節面は大腿骨の内側顆・外側顆と脛骨の上端が接しているだけで、関節構造としては非常に弱い構造となっています。

周囲の筋肉の密度も少ないので、不安定な関節を補うために靭帯が発達しています。

<関節内靭帯>
前十字靭帯、後十字靭帯、膝横靭帯、後半月大腿靭帯

<関節外靭帯>
膝蓋靭帯、内・外側側副靭帯、内・外側膝蓋支帯、内・外側膝蓋大腿靭帯、内・外側膝蓋脛骨靭帯、腸脛靭帯、弓状膝窩靭帯、斜膝窩靭帯

上記のように、これだけ多くの靭帯で関節の前後・内外側を強く補強しています。

大腿骨の形状をみると、大腿骨内側顆>外側顆という形態をしているため、脛骨の関節面は床面と平行にはなっておらず、前額面から見ると脛骨は外転位で、膝関節は外反位となります。

これを生理的外反と呼び、FTA(大腿骨長軸と脛骨長軸のなす角度)という角度を作っています。

FTAの正常角度は176°と言われており、180°を越えると膝関節は内反位、165°以下となると外反位となります。

ここで考えてほしいのは、大腿骨の形状から脛骨が外転位となっているということは、そのまま立つと直立位を保てないのではないか?とうことです。

脛骨が大腿骨に対して外転位であれば、地面に対して斜めに接地することになってしまいます。

なので、地面に対して真っ直ぐに立つには大腿骨を内転させ、内側顆と外側顆を同じ高さにする必要があります。

大腿骨が内転位となることで脛骨は地面に対して直立位となることができ、大腿骨の頸体角があるのもこのためです。

ただ、内側顆>外側顆の話はあくまで膝関節が真っすぐ伸びている場合の話です。

大腿骨関節面の前面では、内側顆>外側顆の関係が逆転しており、内側顆<外側顆となるため、過伸展位では脛骨は大腿骨に対して内転・内反することになります。

つまり、膝関節の過伸展を防ぐには大腿骨を内旋、脛骨を外旋・外反する両骨のリズムが重要というわけです。

ちなみに、関節面の後面でも内側顆<外側顆となっています。

まとめると以下のようになっています。

前面:内側顆<外側顆
底面:内側顆>外側顆
後面:内側顆<外側顆

・膝関節は大腿骨と脛骨の関節面が接しているだけで、関節構造としては弱い
・大腿骨の関節面の形状が内側顆>外側顆となっており、脛骨が外転しFTAを形成している
・大腿骨の底面では内側顆>外側顆だが、前面と後面では内側顆<外側顆と逆転している

膝蓋大腿関節

膝蓋骨の裏面には軟骨が存在しており、関節運動に伴って大腿骨の膝蓋面上を移動します。

膝蓋骨の役割としては、以下の通りです。

・大腿四頭筋の損傷を防ぐ
・膝関節伸展筋力発揮の補助
・膝関節の保護
・膝関節を守る
・膝関節の運動効率を上げる

膝関節伸展に伴う大腿四頭筋の筋出力をサポートしたり、膝に蓋をする骨という読んで字のごとく、膝の前面からの衝撃から膝関節を保護する役割を担っています。

膝蓋骨の役割で重要なのが、膝関節の運動効率を上げるというものです。

図のように、膝蓋骨がある場合とない場合ではある場合のほうが楽に伸展させることができます。

ぱっと見ても分かりにくいかもしれませんが、視覚的にはQの矢印とQ1の矢印を比べるとQの矢印の方が大きくなっていることが分かりますよね。

理解しにくいという方は、とりあえず膝蓋骨があった方が伸展するために必要な力は少なくてすむと覚えておいてください。

つまり、膝蓋骨の動きが悪くなると、図のような力関係にはならず、膝伸展筋力も発揮しにくくなるということ。

そのため、膝蓋大腿関節の可動性を獲得しておくことが必要なのです。

膝関節における重要な筋肉

膝関節における筋肉で重要なのが、以下の3つの筋肉です。

  • ハムストリングス
  • 大腿四頭筋
  • 膝窩筋

それぞれの機能解剖を以下に解説していきます。

ハムストリングス

<大腿二頭筋>
起始:長頭-坐骨結節
   短頭-大腿骨粗面の外側唇の中部1/3
      外側筋間中隔
停止:腓骨頭
作用:股関節伸展・内転
   膝関節屈曲
   下腿外旋
髄節レベル:L5~S1
支配神経:長頭-脛骨神経
     短頭-総腓骨神経

<半膜様筋>
起始:坐骨結節
停止:脛骨の内側顆
   顆間線および外側上顆
   斜膝窩靭帯
作用:膝関節屈曲
   股関節伸展
   下腿内旋
髄節レベル:L5~S2
支配神経:脛骨神経

<半腱様筋>
起始:坐骨結節
停止:脛骨粗面の内側
作用:膝関節屈曲
   股関節伸展
   下腿内旋
髄節レベル:L5~S2
支配神経:脛骨神経

特に重要なのは、ハムストリングスの中でも停止部ではなく起始部、外側ではなく内側の半腱・半膜様筋。

膝関節は構造的に上下の股関節、足関節によって動きが決まります。

ハムストリングスは膝関節の屈筋としてのイメージが強いかもしれませんが、重要なのは股関節筋としての作用。

膝関節運動が破綻するパターンとして、骨盤後傾→股関節外旋→下腿外旋→距骨下関節回内のパターンとなることが多いです。

股関節外旋位で固定されると、殿筋群や大腿二頭筋は短縮位、半腱・半膜様筋や内転筋群は伸張位となって筋出力が低下します。

膝関節を伸展位で安定させるためには、下腿に対する股関節の内旋が重要なので、半腱・半膜様筋が重要となります。

また、下腿外旋位で固定されると大腿二頭筋は短縮位、半腱・半膜様筋は伸張位となって筋出力が低下します。

膝関節屈曲可動域を確保するには、大腿骨に対する下腿の内旋が重要となるので、この視点からしても半腱・半膜様筋が重要となるのです。

大腿四頭筋

<大腿直筋>
起始:下前腸骨棘、寛骨臼上縁
停止:膝蓋骨上縁、膝蓋腱を介して脛骨粗面
作用:膝関節伸展、股関節屈曲
髄節レベル:L2~L4
支配神経:大腿神経

<外側広筋>
起始:大腿骨大転子の外側面、転子間線、臀筋粗面および粗線の外側唇
停止:膝蓋骨の上縁および外側縁、膝蓋腱を介して脛骨粗面
作用:膝関節伸展
髄節レベル:L2~L4
支配神経:大腿神経

<内側広筋>
起始:大腿骨の転子間線から伸びる大腿骨粗線の内側唇
停止:膝蓋骨の上縁および内側縁、膝蓋腱を介して脛骨粗面
作用:膝関節伸展
髄節レベル:L2~L4
支配神経:大腿神経

<中間広筋>
起始:大腿骨の前面および外側面
停止:膝蓋骨の上縁、膝蓋腱を介して脛骨粗面
作用:膝関節伸展
髄節レベル:L2~L4
支配神経:大腿神経

膝の痛みや可動域制限を持つ方に対して「膝の筋力が弱いからですよ!」と大腿四頭筋の筋トレを指導している光景を見かけますが、実際には歩くのに大腿四頭筋の筋力はそれほど必要ありません。

上述しましたが、膝関節運動が破綻する特徴的なパターンとして、骨盤後傾→股関節外旋→下腿外旋→距骨下関節回内をイメージしてみてください。

この状態で膝関節が伸展するとどうなりますか?

膝関節は後方へ落ち込み、膝は真っ直ぐよりも反り返った状態になります。

大腿四頭筋が働くと膝は伸展方向へ動くかもしれませんが、股関節から体幹の位置関係は変わりません。

立位で膝関節を伸展させるために必要なのは、下腿に対して大腿骨、体幹を真上に持ってくる作用が必要。

つまり、ハムストリングスの起始部や大腰筋の働きが重要になるのです。

膝の変形があったり、膝が完全に伸びない方では、常に屈曲位で歩行や階段昇降など各種動作をおこなうことで大腿四頭筋が常に遠心性収縮で緊張した状態となりやすいです。

この緊張した状態の大腿四頭筋に対して筋トレをおこなうと、より緊張を高めることにもなりかねません。

大腿四頭筋とハムストリングスのバランスを考え、ハムストリングスを優位に使うような戦略が必要です。

膝窩筋

起始:大腿骨外側上顆、外側半月板
停止:脛骨の上部後面
作用:膝関節の屈曲、下腿の内旋
髄節レベル:L4~S1
支配神経:脛骨神経

膝窩筋は起始部で外側半月板と連結しており、膝関節屈曲時に下腿の内旋とともに外側半月板を後方へ引く作用をもっています。

これによって、膝関節深屈曲時の半月板の挟み込みを防止しており、深屈曲時に膝関節後外側の痛みがある場合は外側半月板のインピンジメントが起こっている可能性があります。

膝関節運動が破綻するパターンとして、大腿骨外旋→下腿外旋位で固定されている傾向があるとお伝えしました。

この時、膝窩筋は伸張位で筋出力が低下しており、膝関節屈曲にともなう大腿骨外旋→下腿内旋の運動連鎖が阻害されていることがあります。

  • 大腿骨に対する下腿の内旋可動域は十分か?
  • 他動では可動域動くが自動ではどうか?
  • 制限がある場合、何が制限因子となっているか?

これらを考える必要があります。

多いのは、膝窩筋とヒラメ筋間の滑走性の低下。

両者は隣接するように位置しており、本来は互いに滑走しあっていますが、滑走しにくくなると膝関節の動きを制限する要因の1つになります。

膝窩筋は屈曲112°以上で膝窩筋腱溝内にはまり込むとされているため、112°以上での屈曲運動で膝窩筋を正しい位置にはめ込み、その上で運動を反復することで滑走性を促していくことがポイントです(参考文献1)。

膝関節の機能解剖から考える評価

ここまでの膝関節の機能解剖から、具体的にどう評価するのが良いのかを解説していきます。

主に大腿脛骨関節、膝蓋大腿関節、スクリューホームムーブメントの3つについて解説します。

大腿脛骨関節の評価

大腿脛骨関節に対する評価としては、以下の通り。

・大腿骨に対する脛骨の回旋可動域
・大腿骨に対する脛骨近位の前方・後方移動の可動域
・脛骨に対する大腿骨の回旋可動域
・屈曲・伸展時に大腿骨、下腿それぞれ屈曲時→大腿骨外旋+下腿内旋、伸
 展時→大腿骨内旋+下腿外旋の連鎖が起こっているか

大腿骨と下腿の関係性を大腿骨から見た下腿、下腿から見た大腿骨、関節運動時の両骨の動きをそれぞれ評価します。

また、それぞれ動きを評価したら、それが何による制限なのか制限因子まで評価します。

例えば、脛骨粗面が膝蓋骨の正中より外側縁に寄っていると、大腿骨に対して下腿が外旋方向へ偏位していると考えられます。

なので、膝関節外側の組織が下腿を外旋させていると仮説を立てることができます。

外側の組織に何があるかと言うと、腸脛靭帯、腓骨筋、腓腹筋、外側広筋、大腿二頭筋、膝窩筋、ヒラメ筋、LCL、外側半月板などが挙げられます。

これらの組織の内、何が下腿を外旋させているのか?
1つ1つの組織を触診しながら下腿の動きを評価、制限が改善、あるいは悪化する組織が介入するポイントとなります。

もちろん、制限因子は一つとは限らないので、1つ1つ丁寧に制限因子を見つける→介入する→次の制限因子を探すという流れで評価・アプローチしましょう。

膝蓋大腿関節の評価

膝蓋大腿関節に対する評価としては以下の通り。

・膝蓋骨の可動性(上下左右の動き)
・膝関節運動時にともなう膝蓋骨の可動性評価
(膝関節屈曲時→膝蓋骨下方移動、膝関節伸展時→膝蓋骨上方移動)

膝蓋骨単体の動きと膝関節運動にともなう膝蓋骨の動きをそれぞれ評価します。

これも同様に制限因子を細かく評価して、一つ一つ制限因子に対して介入していきます。

例えば、膝伸展位では左右の関節裂隙と膝蓋骨の下縁の高さが一致しますが、下縁が関節裂隙よりも下方偏位していたら、膝下方の組織が制限因子と仮説を立てることができます。

下方の組織と言うと、膝蓋腱、膝蓋下脂肪体などが挙げられます。

これらの組織の内、何が膝蓋骨を下方偏位させているのか?
1つ1つの組織を触診しながら膝蓋骨の動き評価し、制限が改善、あるいは悪化する組織が介入するポイントです。

スクリューホームムーブメントの評価

大腿骨内側顆>外側顆の構造から膝関節の伸展に伴って脛骨は外旋します。

内側顆の方が大きく、内側顆の関節面が外側顆に向かって斜めに走行している構造からも、自然に脛骨が外旋へ誘導されるようにできています。

さらに、靭帯をみるとACLは前顆間区から外側顆にかけて斜めに走行しており、膝関節伸展位で緊張します。
PCLは内旋を制動しており、LCL、MCLも伸展、外旋で緊張します。

靭帯の走行から見ても、膝関節伸展に伴って脛骨の外旋が誘導されるようになっています。

・大腿骨内側顆>外側顆、内側顆の関節面の構造
・靭帯が膝関節伸展時に緊張して外旋へ誘導されるような走行をしている

これらから、スクリューホームムーブメントによる脛骨の外旋が起こるようにできています。

外旋が起こるようにできているということは、外旋せずに伸展するような正常な関節運動から逸脱すると痛みや軟部組織へのストレスの原因となります。

また、老化に伴って靭帯の緊張は緩んでくると言われています。
靭帯が緩むと膝関節伸展時の脛骨外旋が起こらず、内旋・前方移動します。

このことから、靭帯が緩んでいる場合は変形性膝関節症の発症率が高いことがわかっています(参考文献2)。

ここまでは非荷重下での話ですが、重要となるのは荷重下でのスクリューホームムーブメントです。

膝関節は完全に伸展してはじめて構造的に安定します。

関節構造的に不安定な膝関節において、完全伸展できないと軟部組織や靭帯に大きな負担となります。

荷重下では、脛骨は足部と一緒に固定されて動きません。
ですので、大腿骨を脛骨に対して内旋することで脛骨を相対的に外旋位へと持っていく必要があります。

ここまで何度か出てきましたが、脛骨に対する大腿骨と体幹のコントロールが非常に重要となります。

つまり、荷重下においては脛骨に対して大腿骨を安定する位置へ持ってくる股関節の機能が重要となるのです。

<非荷重下でのスクリューホームムーブメントの評価>
・大腿骨に対して脛骨の外旋可動域はどうか、他動・自動運動ともに評価

<荷重下でのスクリューホームムーブメントの評価>
・脛骨に対して大腿骨の内旋可動域はどうか、他動・自動運動ともに評価
・立位下で脛骨に対して大腿骨を内旋できるかどうか評価

非荷重下で脛骨の外旋ができたとしても、荷重下でできるとは限りません。
非荷重下、荷重下どちらも必ず評価するようにしましょう。

膝関節と隣接関節との関係

膝関節は股関節と足関節に挟まれた位置関係にあるため、両者の影響を大きく受けます。

なので、股関節と膝関節の関係、足関節と膝関節の関係をそれぞれ知っておく必要があります。

膝関節と股関節の関係

膝関節が抗重力位で機能的に動くには、下腿に対する大腿骨のコントロール、つまり股関節の動きが重要です。

この股関節のコントロールを上手くおこなうための前提条件を考えると以下の通りです。

・大腰筋が機能している(大腰筋の機能を阻害する因子がない)
・ハムストリングスの近位が機能している
・腰椎、骨盤、股関節がそれぞれ連動して動くことができる

大腰筋は股関節のインナーマッスルであり、股関節と腰椎の安定性に関与しています。

股関節は球関節で自由度が高いですが、その分不安定さも兼ね備えている面があります。
安定性を保ちつつ、自由度が高い状態を保持するには大腰筋の働きが必須というわけです。

加えて、大腰筋が機能していることで大腿四頭筋が適度に緩み、膝関節の動きを邪魔しません。

大腿直筋は股関節の屈曲作用も持っており、大腰筋が機能していないと過剰に働きがちとなり、膝関節に問題がある方は特にその傾向が強いです。

大腿四頭筋と大腰筋のことを考えると、ハムストリングスも重要です。

大腿四頭筋の拮抗筋であるため、ハムストリングスが機能していないと大腿四頭筋は過剰に働いてしまいますし、大腰筋が機能していなくても過剰に働きます。

となると、膝関節も股関節も大腿四頭筋の過剰な働きによって動きが阻害されてしまいます。

また、ハムストリングスは骨盤を介して大腰筋と拮抗関係にあります。

  • 骨盤後傾→ハムストリングス収縮、大腰筋伸張
  • 骨盤前傾→ハムストリングス伸張、大腰筋収縮

このような関係性にあり、ハムストリングスの機能不全と大腿四頭筋の過剰な働きでダブルで大腰筋の機能を邪魔してしまいます。

股関節のコントロールが大事と言っても、股関節は大腿骨だけが動くわけではありません。

腰椎、骨盤、大腿骨それぞれが連動して動くことで股関節の運動となります。

それぞれの制限があれば、まず改善しておく必要がありまし、それぞれが連動していない状態と言うのは大腰筋の機能を阻害します。

なぜなら、大腰筋は腰椎にも付着しますし、唯一体幹と下肢を繋ぐため骨盤を跨いで走行しているからです。

なので、腰椎や股関節に制限があってもだめですし、間の骨盤に制限があっても大腰筋は機能しません。

膝関節と足関節の関係

膝関節は股関節と足関節に挟まれているので、股関節だけが重要なわけではありません。

下肢における運動連鎖は以下のようになっています。

<荷重下での運動連鎖>
大腿骨外旋→脛骨内旋→距骨内転・底屈→踵骨外反
大腿骨内旋→脛骨外旋→距骨外転・背屈→踵骨内反

<非荷重下での運動連鎖>
大腿骨外旋→脛骨内旋→踵骨外反・外転・背屈
大腿骨内旋→脛骨外旋→踵骨内反・内転・底屈

非荷重下では距骨は脛骨の延長として動くため、荷重下と非荷重下の運動連鎖は微妙に異なります。

膝関節運動が破綻するパターンとしては、大腿骨外旋→脛骨外旋→距骨内転・底屈→踵骨外反というパターンが多いです。

内側縦アーチが低下してクロスサポートメカニズムが機能していない状態と言い換えることができます。

足から見る膝関節の評価としては、以下の通りです。

  • 内側縦アーチを他動的に高く誘導して変化を評価
  • 踵骨を内反位へ他動的に誘導して変化を評価

内側縦アーチが落ち込んでいることが膝関節へ影響を与えているのであれば、他動的に舟状骨を上方へ誘導することで内側縦アーチを挙げると、変化があるはずです。

また、舟状骨が落ち込むことで内側縦アーチが低下していることが踵骨由来のものである場合、踵骨を外反位から内反位へ他動的に誘導することで変化があるはずです。

評価の方法としては、誘導した状態で荷重やステップをしてみて、痛みや運動のしやすさなどの変化をみます。

クロスサポートメカニズムに関しては、後脛骨筋と腓骨筋の作用が必要です。

後脛骨筋は舟状骨に付着しており、その作用によって舟状骨を上方へ引き上げてくれることでアーチが形成されます。

足関節のインナーマッスルでもあるので足関節の安定性という視点でも重要な筋肉です。

後脛骨筋の評価としては、緩んだ肢位で収縮が入るのかどうかみることが大事です。

足関節底屈、足趾屈曲位、膝関節屈曲位で底屈に対して抵抗を加えて筋出力を評価します。
足趾屈曲位で足趾外在筋、膝屈曲位で腓腹筋の作用を抑制した状態で評価します。

まとめ

  • 膝関節は大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節に分けて考える
  • 膝関節は構造的に不安定なため、多くの靭帯で安定性を高めている
  • 大腿骨内側顆の方が外側顆に比べて大きく、FTAと呼ばれ生理的な外反を形成している
  • 膝蓋骨は膝関節伸展に伴う大腿四頭筋の筋出力をサポートしたり、膝の前面からの衝撃から膝関節を保護する役割を担う
  • 大腿骨に対する下腿の内旋を誘導するために、ハムストリングスでも半腱・半膜様筋が重要
  • 大腿四頭筋による膝伸展作用も重要だが、単独でというよりはハムストリングスとの協調性を考えた使い方がポイント
  • 膝窩筋は深屈曲時のインピンジメントの防止や外旋しやすい下腿を内旋へ誘導するために重要
  • 膝蓋骨の内・外側縁と脛骨粗面の位置関係から下腿の回旋を評価できる
  • 内外の関節裂隙の高さと膝蓋骨下縁の高さから膝蓋骨の偏位を評価できる
  • 荷重下での脛骨に対する大腿骨の内旋が膝を伸展するために重要
  • 立位での骨盤と大腰筋、ハムストリングスの関係を考えることがポイント
  • 荷重下、非荷重下それぞれでの膝関節と距骨下関節、踵のアライメントや動きを評価することがポイント

今回は膝関節の構造から重要な筋肉の機能解剖を中心に解説し、そこからどんなことが臨床的に重要なのか、その知識をどう活かすべきなのかを解説しました。

膝関節単独で見ても、大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節に分けることができますし、股関節や足関節との関連もあります。

そのため、膝関節なら膝関節だけという狭い視点ではなく、隣接関節との関連など広い視点も必要です。

ピラティスで運動を指導する際においても、狭い視点と広い視点を切り替えながら考えることができる柔軟な思考が求められるでしょう。

ただ、いきなり全てを理解するのは難しいので、本記事の内容を少しずつ解釈を深めつつ実践の中で知識として習得していっていただければと思います。

参考文献

1.赤羽根 良和 : 機能解剖学的にみた膝関節疾患に対する理学療法. 運動と医学の出版社, p95, 2018

2.石井 慎一郎 他 : 高齢者の活動と膝関節機能. 理学療法20: 830-837, 2003

N.Pilates Seminar

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