上腕三頭筋の解剖学〜ゼロからわかる解剖学〜

目次

上腕三頭筋の解剖学的特徴

上腕三頭筋は、二の腕の後ろ側にある大きな筋肉です。

肘を伸ばしたときに浮かび上がる「腕の裏側のライン」がまさに上腕三頭筋です!

この筋肉には、肘を伸ばす(伸展)という働きがあります。

たとえば、

  • 椅子を押して立ち上がるとき
  • 高い棚に物を押し込むとき などに使われています。

また、上腕三頭筋の長頭は肩甲骨に付着しているため、肩関節の動きにもわずかに関与しています。

長時間のデスクワークなどで腕をあまり使わない生活が続くと、上腕三頭筋は弱くなったり、

長時間の脇を締めた姿勢の保持で硬くなる可能性もあります。

この筋肉が弱くなると、肘が伸びきらずに猫背や肩の丸まりを助長してしまうこともあります。

今回はこの上腕三頭筋について、解剖学からやさしく解説し、明日から使えるチェックポイントやトレーニング方法もご紹介します!


上腕三頭筋の起始停止

【起始】

  • 外側頭:上腕骨 後面(橈骨神経溝より上)
  • 長頭:肩甲骨 関節下結節
  • 内側頭:上腕骨 後面(橈骨神経溝より下)

【停止】

  • 尺骨 肘頭(肘の骨の先端)

【作用】

  • 肘関節の伸展(腕をまっすぐ伸ばす動き)
  • 長頭は肩関節の伸展・内転を補助

作用については上記のとおりですが、

相変わらずやや専門用語が多くてとっつきにくいですよね!

実際には、「どこからどこについていて、どんな方向に引っ張るか」を大まかに理解するだけで、十分エクササイズ指導に役立ちます。

なので、簡単に理解したい方は、こちらをご参照ください!


【ズボラ起始】
肩甲骨のうしろ(長頭)と、腕のうしろ側(上腕の骨の上の方と下の方)

【ズボラ停止】
肘の先っちょ(とがってるところ)


ざっくりと理解した上で、上腕三頭筋のポイントとしてぜひ覚えておいて欲しいのは

★ 3つの起始が肩甲骨と上腕骨の後面から出ているということ
★ すべてが肘の先に集まって、肘を伸ばす動きに関与するということ


この特徴を意識すると、なぜプッシュアップや立ち上がり動作で上腕三頭筋が重要なのかが見えてきます。

また、長頭が肩甲骨から出ていることで、肘だけでなく肩関節の動き(特に腕を後ろに引く動作)にも関わるという点も忘れずに押さえておきたいところです!

上腕三頭筋が硬くなるとどうなる?

上腕三頭筋には3つの頭がありますが、その中でも長頭(long head)は肩甲骨の関節下結節からスタートしています。つまり、この筋肉は「肘を伸ばす」だけでなく、「肩関節」にも影響を及ぼしてしまいます!


肩関節をまたぐ=肩の動きに制限をかける

上腕三頭筋、特に長頭が硬くなると、特に肩関節の屈曲(腕を上に上げる動き)のときに「後ろから引っぱるような張力」がかかります。

その結果、

  • 腕が上がりにくい
  • 無理に上げようとすると肩がすくむ
  • 胸が開きにくくなる
  • 肩甲骨が上手く回旋できない

といった可動域制限や代償動作が起こりやすくなります!


これらの影響により、上腕三頭筋が収縮・短縮しやすくなり、肩まわりや背中の可動性を下げてしまうのです。

さらに上腕三頭筋が硬くなりすぎるとオブリゲート・トランスレーションという現象も起きてしまいます。

肩関節の可動制限がある場合、肩甲上腕関節に「obligate translation」が生じ、関節中心が逸脱しやすくなる

引用:
Harryman DT 2nd, Sidles JA, Clark JM, et al.
Translation of the humeral head on the glenoid with passive glenohumeral motion.
J Bone Joint Surg Am. 1990 Jul;72(6):1334–1343. PMID: 2381374

これは関節のある方向への回旋や可動が制限されたときに、代償的に関節の位置が“強制的にズレてしまう現象”を指します。
これは関節包や筋の非対称な緊張
によって起こり、正常な関節中心の動きを妨げる原因になります。

上腕三頭筋に当てはめると、上腕三頭筋の硬さにより上腕骨頭が前に押し出された状態の事を言います。

この状態になると肩の前側の痛み巻き肩の原因にもなるので要注意です・・・!

以下は上腕三頭筋の硬さチェックの簡単な方法です。

一人でもできますので是非鏡の前でチェックしてみてください!


硬さのテストでもし引っ掛かったらストレッチ推奨ですので最後に紹介する方法を実践してみてください。

上腕三頭筋が弱いとどうなる

上腕三頭筋が弱くなると、

  • 肘をしっかり伸ばせなくなる
  • プッシュ動作(腕立て伏せや立ち上がり)が苦手になる
  • 肩甲骨の安定性が低下し、姿勢が崩れる

などの症状が出現します・・・。

さらに、スポーツ動作においても、腕を押し出す力が弱くなるとパフォーマンスが低下しやすくなってしまいます。

特に、上腕三頭筋長頭は、肩甲骨に付着し、肩関節の動的安定性に関与します。
出力が落ちると、リーチやプッシュの際に上腕骨頭が前方へズレやすくなり、不安定なフォームやケガにも繋がります。

引用:Bohannon RW. “Associations of hand-grip and leg muscle strength with performance of functional tasks among older adults.” Phys Ther. 2001. PMID: 11680709


ストレッチとエクササイズのポイント

上腕三頭筋をストレッチするときは、

  • 肩関節を屈曲(腕を上にあげる)
  • 肘を屈曲(曲げる)

この2つを同時に行うことで、特に長頭がしっかりと伸びます。

まずおすすめのストレッチからです。

おすすめのストレッチは捻りのポーズです!ヨガにもある動きですね!

下側の肘を曲げながら捻ることにより、上腕三頭筋の起始停止を伸ばすことができます。

続いておすすめのエクササイズです!

おすすめのエクササイズはリバースプランクです。

こちら肘の上腕三頭筋のみならず背中のバックマッスルの強化や前胸部のストレッチにもなる

コスパ最強のエクササイズです!

まとめ

上腕三頭筋は、二の腕の後ろにあり、肘を伸ばすだけでなく、姿勢や肩の安定にも関わる重要な筋肉です。

硬くなっても弱くなっても、姿勢や動作に影響を与えるため、定期的なストレッチとトレーニングが必要です。

特に肩まわりの機能改善や猫背改善を目指すなら、背中や体幹だけでなく、上腕三頭筋のコンディションにも目を向けてみてください。

N.Pilates Seminar

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次