腹直筋の解剖学〜ゼロからわかる解剖学〜

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動画で腹筋を学ぶ

腹直筋の解剖学的特徴を知ろう!

「腹直筋って、お腹のアウターマッスルでしょ?」「ピラティスでは動きの邪魔になるって聞いたけど…」

そんなふうに、“悪者扱い”されがちな腹直筋。

でも、実は適切に機能すれば、体幹の統合・安定・呼吸に関わる重要な役割を担っています

今回は、ピラティスや理学療法の視点から「腹直筋の再評価」をテーマに、
その構造・機能・エラー・エクササイズまでわかりやすくまとめていきます。

腹直筋が“悪者扱い”される理由

  • 「腹直筋ばかり使うと体幹が硬くなる」
  • 「表層筋だから、深層(腹横筋)の邪魔をする」
  • 「ドローインと相性が悪い」

…といった見解は、一部の機能的制限に偏った視点からきています。
確かに、“過活動”で使われすぎている人もいますが、本来の腹直筋はとても大切な筋肉です。

実はピラティスに欠かせない役割がある

① ロールアップ・ロールダウンの屈曲動作に不可欠

腹直筋は、脊柱を分節的に曲げるための“主動筋の一部”です。
肋骨から恥骨へ引き寄せる方向性の力を持つため、特に胸椎・腰椎屈曲動作のリード役になります。

→ 腹直筋が弱いと「ロールダウンで腰が残る」「首ばかり使う」などのエラーが出やすい。

② 腹腔内圧(IAP)を支える一角

腹横筋・多裂筋・骨盤底筋とともに、腹直筋もまたIAPのコントロールに寄与するという報告も多く存在します。

  • Hodges & Gandevia(2000)は、腹直筋も姿勢制御時にタイミングよく収縮することを確認。
  • Misuri et al.(1994)は、強制呼気や腹圧保持時に腹直筋の活動が見られることを報告。

→ ピラティスで重視される「ニュートラル保持+呼吸連動」の中でも、腹直筋はしっかり使われています。

③ 抗伸展・抗回旋の“補助的役割”

腹直筋は「抗伸展」(腰を反らせない)という力学的役割も持ち、
プランクやバードドッグといった安定性トレーニングで、腹横筋とともに働きます。

  • 特に腹部の“縦走線維”は、体幹前面の張力を保つ格子状の構造と連携。
  • 日常の荷重動作(例:子どもを抱き上げる、立ち上がる)においても重要。

④ 身体イメージの形成にも関与

腹直筋の収縮感は、クライアントが「お腹を使ってる!」と実感しやすい部位。
感覚フィードバックの起点として、ピラティス初心者にとっては非常に有効です。

→ ここから腹横筋・骨盤底筋の再教育へと段階的に導くアプローチが効果的。

ピラティスで大事なのは「腹直筋を“どう使うか”」

  • 腹直筋は、排除すべき筋ではなく、“適切に使うべきアウター”
  • インナーとのタイミング・強度・連携性を整えることで、
     ロール動作や安定性エクササイズが質的に高まる
  • “感じやすい”からこそ、最初の導入にも使えるし、
     繊細に使えば、深部感覚の橋渡しとしても機能する

腹直筋の起始停止とは?


腹直筋(Rectus Abdominis)は、胸郭から恥骨まで縦に走る長い筋肉。シックスパックで知られる腹部の表層筋です。

  • 起始:第5〜7肋軟骨、剣状突起
  • 停止:恥骨結合、恥骨稜
  • 走行:腹部正中線に沿って縦方向に走行し、腱画(けんかく)によって数個に分割される
  • 支配神経:肋間神経(T5〜T12)

作用:

  • 脊柱の屈曲(体を丸める動き)
  • 骨盤後傾の補助
  • 腹腔内圧の保持
  • 呼気補助(腹式呼吸時の筋収縮)

はい!医療従事者の方は上で100%覚えれるようにしてください!!笑

インストラクターの方は下でゆるっと抑えましょう!


起始・停止(ズボラバージョン)

【ズボラ起始】あばらの下からはじまる

【ズボラ停止】恥骨にくっついてる
→つまり「胸郭から骨盤までをつなぐ、縦の安定ベルト



腹直筋が硬くなるとどうなる?

  • 肋骨が下に引き下げられる → 呼吸が浅くなる
  • 脊柱屈曲優位になり、胸椎伸展が難しくなる
  • 骨盤後傾が強くなり、ハムストリングス・殿筋に負担が集中
  • ピラティスで「伸びる・広がる感覚」が出にくい

と、ざらっと並べるだけでも色々なデメリットがありますが、要するに

猫背になってしまうと言う事です!

腕も上げにくくなってしまうのでかなり生活にも支障が出てしまいます。

基本的には体幹の筋力低下があって腹部が潰れた状態が長期間続くと癒着して硬くなるイメージです

皆さんが持たれる腹直筋を鍛えすぎると悪いイメージはここかもしれませんね!

実際は鍛えすぎてこうなると言うよりは、長期間の不良姿勢で腹直筋が弱化&短くなって硬くなることがしばしば。

腹直筋が弱くなるとどうなる?

  • 腹腔内圧が逃げる → 腰椎・骨盤が不安定に
  • 脊柱屈曲がうまくできず、ロールダウンで引っかかる
  • 内臓下垂や腰椎前弯の増大に関与
  • 腹直筋離開があると体幹統合ができず、パワーロスにつながる

これも専門的に並べると色々ありますが要するに、

腹筋ができないのと、腹腔内圧をキープできず反り腰さんになるという事です!

この内圧をキープするためには腹直筋は伸びながら使われる必要があります!

機能的な腹直筋とは、腹圧を前方に抜けないように遠心性に活動し、前方から蓋をするように働いている状態。

つまりゴムの様な伸びながら収縮しようとする張力があると良いです。

よくある持ち上げるだけを意識した腹筋では伸びながら使う機能を鍛えることはできません。

ただ、
そもそもそれ以前に収縮能力が低いと腹筋すら困難な場合があるので…

段階分けとしては、

①普通の腹筋ができる(写真の様な代償動作のない)②おろす時ゆっくり降ろすことを意識できた腹筋にチャレンジ

の順にレベルアップしていくと丁寧だと思います!


指導現場でよく見るエラー

腹直筋に問題があるとピラティスや運動指導でエラーが出ることもあります。

以下一例です!

◎ロールダウンで「胸が先に落ちて腰が残る」
→ 腹直筋優位・腹横筋と連携していない

これは腹直筋は背骨のコントロールにそこまで関与しないので、ここの緊張が高まってしまうと

腰椎の分離運動を阻害するからです。

クランチなどの腹筋ツイスト系のエクササイズで「首ばかり使ってしまう」
→ 腹直筋の初動が入らず、代償的に胸鎖乳突筋などが頑張ってしまう

これは腹直筋が肩甲骨下角までの挙上の際に収縮するので、その収縮力が弱いからです。

Halpernらの研究では、「肩甲骨が床から離れるまで」のシットアップが腹筋の収縮効率・安全性ともに最良であるとされています(Halpern & Bleck, 1979)


息を止めながらロールアップ
→ 腹圧でごまかしている(機能的に使えていない)

これは前方への陽圧でアウター優位の体幹屈曲になってますね



ストレッチとエクササイズ

ここからは機能改善に対するストレッチとエクササイズの紹介です!

① スーパーフィシャル・フロント・ライン(SFL)ストレッチ

  • 目的:腹直筋 → 恥骨筋膜 → 大腿四頭筋 といったSFLの連結を利用した筋膜ストレッチ
  • 方法:後方に体を倒してSFLの伸びを感じる
  • ポイント:最終域で深呼吸をして前胸部の伸長感を高める

② チェストリフト

  • 目的:腹直筋の強化
  • 方法:Halpern & Bleckの研究を参考に、腹直筋が効率良く収縮する肩甲下角までの腹筋を行う
  • ポイント:①肩甲骨より上まで上げると腹直筋の収縮効率が落ちるので注意。
         ②腹直筋を伸びながら使うイメージを強化したいので、頭部を上げ戻る時もゆっくり降ろして、
          遠心性収縮の意識を!

まとめ

本日は腹直筋についてまとめした!

以下要点です!

  • 腹直筋は、決して“悪者”ではない
  • 硬くても、弱くても不調の原因になる
  • 指導者は「使いすぎている人」と「使えていない人」を見極める必要がある
  • 大切なのは、“引き込みながら長く使う”という質のコントロール

働きすぎてピラティスの動きを邪魔してしまう認識もある腹直筋ですが、

必要な動きもいっぱいあるんです!

不必要な筋肉は1つもない!是非皆さんもこの意識を持って普段の指導を行なってみてください!

N.Pilates Seminar

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