<保存版>ピラティス指導に必要な胸郭の解剖・バイオメカニクスまとめ!

ピラティスの指導をする上で。

猫背・肩こり・腰痛などを抱えているクライアント様の9割近く「胸郭」に機能的な問題を抱えています。

胸郭はその位置と大きさから姿勢への影響も大きく。

隣接する肩や首、腰に与える影響も大きいという重要な部位です。

現代人の多くが猫背で頭部前方偏位の姿勢であることからも、ほとんどの人が胸郭の動きが悪く、動きの改善が必須です。

また、ピラティスでは腹式呼吸ではなく、胸郭を拡張させて行う胸式呼吸を行うことが多いため、胸郭についての理解はピラティスにおいて重要ですね。

そこで、不良姿勢の修正、肩や首、腰の痛みを解消するのに役立てたいという方に向けて、胸郭の解剖学や動きについて解説していきます。

目次

胸郭を構成する3つの骨と4つの関節

胸郭がどのように動くかを把握するには、まず胸郭がどんな組織で、どんな関節で構成されているのかをおさえておきましょう。

【胸郭を構成する骨】

  • 胸椎(12椎)
  • 肋骨(肋軟骨):左右12対
  • 胸骨

【胸郭を構成する関節】

  • 胸椎椎間関節
  • 胸肋関節
  • 肋椎関節(肋横突関節、肋骨頭関節)

※胸鎖関節(胸郭構成要素の関節ではないが重要)

このように、胸郭は胸椎、肋骨、胸骨から構成されており、それらが作る関節が動くことで胸郭全体としての動きが作られます。

胸郭で特徴的なのは、肋骨と椎体が接しており、関節を形成しているということです。

つまり、ピラティスで胸郭に対する運動指導を考えるには、胸椎椎間関節、胸肋関節、肋椎関節がどう動いて、どう動きを引き出すかを考える必要があるわけです。

胸椎椎間関節の機能解剖とバイオメカニクス

胸椎は全部で12個の椎体があり、椎間関節も左右12対の合計24個の椎間関節が存在します。

上下2つの椎体で形成されており、上の椎体の下関節突起と下の椎体の上関節突起それぞれの関節面が向かい合う形で椎間関節を作っています。

椎間関節は頚椎、胸椎、腰椎でそれぞれ形状が微妙に異なります。

胸椎の場合は関節面がおおむね横方向をを向いており、垂直面は60度傾斜しています。

つまり

「胸椎は回旋が得意・屈伸が苦手」

という関節面の特徴をしているのです。

一方、腰椎は関節面が矢状面・横を向いているため、屈伸の動きは自由に動けますが、回旋の動きは制限されやすいという特徴があります。

腰痛を発症してしまう方は、胸椎の可動性が低く、腰で回旋を代償して過剰な動きを生じている場合が多いため、胸椎の可動性UPが求められます!つまり、腰痛は「腰」だけを見ていても解決できないということになります!

背骨の動きの特徴を理解しよう!

では胸郭を理解する上で重要な「背骨全体の動き」の特徴をチェックしてみましょう!

はい、複雑ですね!

でもシンプルに覚えましょう!

<背骨の特徴をまとめ>
1:頚椎は回旋が得意。
2:胸椎は大きく動く骨ではないが、回旋・側屈は得意。でも屈伸は得意ではない。
3:腰椎は屈伸が得意!でも回旋や側屈は苦手!

この動きから逸脱した運動は背骨を痛める危険性があるので、しっかりと理解しておきましょう!

胸肋関節の機能解剖とバイオメカニクス

胸肋関節は上から7本の肋骨と胸骨の外側で形成される関節です。

肋骨は左右12対ありますが、上から8〜12本は胸骨とは接していません。


胸肋関節を細かく見ると、肋骨と胸骨の接合部の間には軟骨が存在し

・肋骨と軟骨の間を肋軟結合
・軟骨と胸骨の間を胸軟結合

と呼ばれ、この2つを合わせたものが胸肋関節となります。

関節とは定義されていますが、便宜上関節と名称がついているだけで、胸肋関節自体に可動性はほぼありませ。(呼吸に合わせてわずかに可動します)

胸肋関節の動きは肋椎関節の動きに依存して行われるため、着目すべきは肋椎関節の動きになります!

肋椎関節の機能解剖とバイオメカニクス

肋骨の前方が胸肋関節を形成するのに対し、後方では12対の肋骨と胸椎が肋椎関節を形成しています。

肋椎関節を細かく見ると、肋横突関節と肋骨頭関節の2つに分けられ、それら2つを合わせた総称のことを言います。

肋椎関節は2つの関節から成る!
・肋横突関節
・肋骨頭関節

肋横突関節:胸椎横突起の先端にある横突肋骨窩と肋骨結節と呼ばれる横突起と接する部分とで関節を形成。靭帯によって安定しています。

肋骨頭関節:肋骨の背中側の先端である肋骨頭と上下2つの椎体の間にある上下肋骨窩で関節を形成。こちらも靭帯によって強固に安定しています。

肋椎関節は呼吸に合わせてわずかに動き、以下のように動きます。

第1~5肋骨:矢状面から見て、吸気に伴い椎体に対して、肋骨が後方回旋(ポンプハンドルモーション)
第6~12肋骨:前額面から見て、吸気に伴い椎体に対して、肋骨が下方へ転がり、滑り運動、上方回旋(バケツハンドルモーション)

上半分の上位肋骨はポンプを上げ下げする様に似ていることからその動きをポンプハンドルモーションと呼び、下半分の下位肋骨はバケツの柄の動きに似ていることからバケツハンドルモーションと呼ばれています。

肋骨の締まりの肢位
肋骨が後方回旋:肋椎関節の適合性が高まり、関節としては締まりの肢位となって安定。
肋骨が前方回旋:肋椎関節の適合性は低くなり、関節としては緩みの肢位となって不安定。

このことからも、現代人で多い猫背の姿勢では肋骨が前方回旋しているため、胸郭は不安定と言えます。

つまり、

1不安定な胸郭を代償して腰部や頚部、肩の筋肉を過剰に緊張
2姿勢の悪さを助長したり様々な症状を出現

させてしまうわけですね。

胸郭に作用する2つの重要な筋肉

では次に胸郭に関する筋肉の働きをチェックしてみましょう!

中でも以下の2つの筋肉が不良姿勢の修正や胸郭を含め隣接関節を機能的に動かすためにも大事になります。

  • 腹斜筋群(外腹斜筋、内腹斜筋)
  • 多裂筋

この2つの筋肉が上手く働かないと胸郭も偏った動きになり、不良姿勢や腰痛や肩、頚部の機能障害の原因なります。

では詳しくみてみましょう。

腹斜筋群(外腹斜筋、内腹斜筋)と姿勢の関係性

<腹斜筋の走行をチェック!>
外腹斜筋:第5〜12肋骨の外側面から、鼠径靭帯、腹直筋鞘の前葉、腸骨稜の外唇へ付着。
内腹斜筋:鼠径靭帯、上前腸骨棘、腸骨稜から、第10〜12肋骨の下縁、腹直筋鞘へ付着。

どちらも肋骨と腹直筋、骨盤へと付着していますが、外腹斜筋は肋骨→骨盤へ向かうのに対し、内腹斜筋は骨盤→肋骨へ向かうように走行しています。

また、それぞれ反対側の腹斜筋と腹直筋鞘を介して連続性があり、外腹斜筋から反対側の内腹斜筋というように、腹部を対角線にまたぐような形で、機能的に1つの筋肉として働くことで体幹の回旋を生み出しています。

ただ、腹斜筋群の大事な役割は体幹の回旋だけではありません。

代表的な不良姿勢として、胸椎の後彎が増大した「猫背」があります。

腹斜筋が効かないと・・腰椎は伸展・骨盤は前方偏位したスウェイバック姿勢を伴います。肋骨の下部は後方回旋し、腹部が伸張されたリブフレアという状態になります。

この状態は。腹斜筋・腹筋群が伸張されて働きにくくなっているので、姿勢が安定せず不良姿勢や腰痛などの症状へ繋がります。

腹斜筋群が働けば、肋骨を前から引っ張ることで、前方回旋させて肋骨を締めることができるので、腹筋群が働きやすくなるため、体幹が安定して姿勢の安定や腰痛を起こりにくくすることができるのです!

多裂筋

多裂筋は第4頸椎から第5腰椎までの横突起から、2〜4分節上の棘突起へ向かって伸びています。棘突起を引っ張ることで椎体自体は棘突起と反対側へ動くので、回旋運動を生み出します。

猫背になると胸椎は後彎が増大するので背骨の棘突起間の距離が伸ばされ、多裂筋も伸びて収縮しにくくなります。

多裂筋自体は小さな筋肉なので、胸椎を伸展させるよりも椎体間を安定させることで脊柱起立筋の収縮を助けるという役割になります。

ピラティスを指導しているときに。

「あれ?胸椎の伸展がうまく出ないな〜」と悩むことはありませんか?

多裂筋が働きにくい状態は椎体間が安定していないので、いきなり胸椎を伸展させるような運動を指導しても上手くいかない可能性が高いのです。

まずは胸椎の伸展を促す前に、多裂筋を丁寧に働かせてから指導すると良い反応が得られますよ!

胸郭の機能解剖とバイオメカニクスの簡単な動画まとめ

胸郭の制限を評価する方法

胸郭は胸椎椎間関節、胸肋関節、肋椎関節の主に3つの関節で構成されているので、どこの動きが悪いのかを評価していく必要があります。

ここまでの内容から、胸肋関節は肋椎関節の動きに依存していますし、肋椎関節は胸椎横突起、上下椎体間の肋骨窩と関節を形成しているため。椎間関節の動きを改善することが他の関節の動きも改善することに繋がります。

なので、ピラティスで運動指導するにあたって見るべきポイントは以下の3つです。

  • 胸椎の屈伸、回旋、側屈の可動性が十分あるか
  • 可動性が低いのは胸椎の中でもどの部位なのか
  • 動きの中で腰椎など他の部位で胸椎の動きを代償していないか

この3つを押さえることで、運動指導の幅が劇的に広がりますし、効果も高くなります!

<胸椎の椎間関節の動きの評価・分析>

  1. まずは、自動運動で胸椎を屈伸、回旋、側屈してもらった時の動きを評価しましょう。
  2. 大まかにと上位と下位に胸椎を分け、どちらが動いていないか、あるいは動きすぎているかを確認しましょう。
  3. また、動いていない場合、反対に動きすぎている部位がないのかも確認しておきます。

例えば、下位胸椎の動きが悪くて、胸椎を伸展してもらうと腰椎を過剰に伸展させて代償している場合。その場合は、腰椎の代償が出現しないように安定させた上で、胸椎の伸展を引き出すような運動を組み込んでいく必要があります。

椎間関節の動きを改善することが最優先ですが、肋椎関節も併せて評価しておくと、その後の運動を組み立てやすくなりますし、肋椎関節の動きへもアプローチできれば、より高い効果が期待できます。

<肋椎関節の動きの評価・分析>

肋骨の評価では、まず、吸気と呼気のどちらに問題があるのかを評価し、それに基づいた評価を進めていく流れになります。

肋骨は、吸気では挙上、呼気では下制。挙上では一番上の肋骨から順に、下制では一番下の肋骨から順に可動します。

途中の肋骨から急に動くということはないので、どの部位の肋骨が起点となって呼吸運動を制限しているのかを評価することが大事です。

具体的な方法は以下の通りです。

上位肋骨
→手を頚部の後方へ当て、胸椎伸展で肋骨が最大に吸気方向へ動いた状態で吸気をして肋骨の動きを評価

下位肋骨
→手を頚部の後方へ当て、胸椎伸展、検査側と反対へ側屈、検査側へ回旋で最大に吸気方向へ動いた状態で吸気をして肋骨の動きを評価

制限されている部位の目星がつけば、呼吸を使ってそこを意識的に膨らませるようにキューイングしたり、伸張させるような運動を組み込んでいくことができます。

胸郭の解剖・バイオメカニクスのまとめ

いかがでしょうか?

上半身の中でも大きな質量を占める胸郭の構造と動き、胸郭に作用する筋肉の走行や働きを理解できれば、姿勢改善だけでなく、肩こり、ストレートネック、腰痛などの問題が解決できることでしょう。

姿勢、腰部や頚部、肩への影響も大きい部位なので、そういった症状を解決するには胸郭への運動は必須。そのためにも胸郭の構造と動きの理解も重要になってきます。

今回は胸郭を構成する胸椎椎間関節、胸肋関節、肋椎関節の構造と動き、そこからどうやって動きを評価していくのかを解説しました。

問題点を見抜くのが難しい部位ではありますが、ここを丁寧にするかどうかで効果に大きな差が出てくると思いますので、ぜひ今回の内容を参考に実践してみてください。

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