肩甲下筋の解剖学〜ゼロからわかる解剖学〜

本日は肩甲下筋という筋肉を紹介させていただきます。


回旋筋腱板(ローテーターカフ)を構成する4つの筋群の1つです!


この肩甲下筋は唯一肩の前面から肩関節を安定させるインナーマッスルになります。


とても重要な筋肉ですので是非おさえていきましょう!

目次

肩甲下筋の解剖学的特徴を知ろう!

肩甲下筋は、

肩甲骨の前面(肋骨側)をほぼ覆う大きな扇状の筋肉で、

回旋筋腱板の一員です。


腱板の中で唯一「内旋」に特化しつつ、

肩関節の前方安定化を担う非常に重要な筋肉です。

ポイント

  • 腱板の他の3つ(棘上筋・棘下筋・小円筋)は外旋や外転の補助が多いですが、
    肩甲下筋は逆方向(内旋)を担当。
  • 投球、ラケットスポーツ、格闘技、日常生活の押す・捻る動きで必須。
  • 臨床では、肩の前面痛・五十肩・インピンジメント・反復性脱臼などの症例で必ず評価対象に入ります。

1. 前方安定化のガードマン

Gerberら(1996)は、肩甲下筋腱の断裂があると肩関節の前方安定性が著しく低下し、
外旋時に骨頭が前方に逸脱しやすくなることを報告しました。


これは投球動作やサーブ動作の「コッキング期」など、外旋+外転が大きくなるポジションで特に問題になります。

“The subscapularis tendon plays a critical role in anterior stability of the glenohumeral joint, especially during external rotation.”
— Gerber C, Hersche O, Farron A. Clinical and structural results of repair of the subscapularis tendon. J Bone Joint Surg Am. 1996;78(7):1015-23.

つまり、

肩甲下筋が弱くなると、

投球動作で胸を張る際に肩前方に、違和感が出るようになる

ということです!

2. 内旋だけではなく「引き込み役」

肩甲下筋の収縮は、単なる回旋動作だけでなく、

上腕骨頭を後方に引き込み、前方への押し出しを抑える働きがあります。


これは、肩関節の安定性を保つための「引き込み役」としての重要性を示しています。


特に、外旋筋群(棘下筋・小円筋)との拮抗的バランスが崩れると、

肩甲下筋の過緊張や逆に機能低下が生じ、可動域や力発揮に影響します(Reinold et al., 2004)。

“The subscapularis works in concert with the infraspinatus and teres minor to maintain a balanced force couple in the transverse plane.”
— Reinold MM, et al. The scientific and clinical rationale for the use of exercises to restore function of the rotator cuff. J Orthop Sports Phys Ther. 2004;34(11):702-721.



つまり、

骨が前方に脱臼しないように、蓋をするように前から押さえ込んでいる

イメージです!

起始・停止(きっちり&ズボラver.)

ここからは毎回恒例の起始停止の紹介です笑


2つのバージョンをご用意しました!


◎きっちりver.

まずはまずは、しっかりとした起始停止から!


医療関係の方はこちらでしっかりおさえて、

指導に役立ててください笑

  • 起始:肩甲下窩(肩甲骨前面ほぼ全域)
  • 停止:上腕骨小結節・関節包の前面
  • 作用
    1. 肩関節の内旋
    2. 上腕骨頭の前方安定化

◎ズボラver.

次はインストラクターさん向けのズボラバージョン!

起始停止の走行をおおよそで大丈夫ですのでおさえていきましょう!

  • 起始:肩甲骨の前側全部
  • 停止:腕の前の出っ張り
  • 作用:腕を内にひねる+肩の前を守る

硬いとどうなる?

主な症状や特徴:

  • 内旋制限(後ろ手での動作がしづらい)
  • バンザイ動作で肩が詰まる感じ
  • 前面の張り感や違和感
  • 肩甲骨前傾位の固定(胸郭の動きが悪くなる)

硬さは「肩の動きが悪い」というより、肩甲骨と胸郭のリズムが崩れることによって可動域全体に影響します。
そのため、胸郭の回旋や肋骨の動きも同時に評価する必要があります。


弱いとどうなる?

主な症状や特徴:

  • 投球動作でコッキング期に肩前方が不安定になる
  • 腕を前方に押し出す力が弱くなる(押す動作のパワー低下)
  • 繰り返し外旋方向に負荷がかかると痛みや炎症が出やすい
  • 脱臼・亜脱臼の再発リスク増加

弱さは「筋力不足」というよりも、タイミングの遅れとして現れることが多いです。
筋力テストだけでなく、動作の中での発火タイミングも評価しましょう。


よくあるエラー例

エラー①:プランク中に肩がすくむ

肩甲下筋が機能せず、肩関節前方が不安定な例はプランク時に肩がすくむようなエラーが出やすいです!


前方で安定させるのが困難となると、上方向に逃すような代償が出現します!

上方向に肩が挙上すると、僧帽筋上部が過剰に活動してしまうので、

首や肩の詰まり感が出やすくなります!

エラー②:ロングバックストレッチで後ろに腕が伸びない

肩甲下筋の出力が低下していると、

後ろに腕をリーチするロングバックエクササイズの可動域が小さくなりやすいです。


なぜなら肩甲下筋で肩関節を安定させることができず、肩関節が前方に逸脱してしまうからです!



ストレッチとエクササイズ

ストレッチ:肩甲下筋ストレッチ

  1. 両手で棒を把持する
  2. 伸ばしたい側の腕を上側にして、肩関節を外旋させる
  3. 肩前面に伸びを感じたらキープ
    ⇨ 20〜30秒、呼吸を止めずに

エクササイズ:ロングバックストレッチ

  1. 立位スタート。肩甲骨は下制位。肩がすくまないように注意。
  2. 肘を軽く曲げたポジションから。肘を伸展していく。
    ⇨ 肩関節・肩甲骨の位置を保ったまま行う


まとめ

肩甲下筋は、肩関節の内旋と前方安定性を担う重要なインナーマッスルです。


硬さは詰まり感や可動域制限に、弱さは不安定性やケガのリスクに直結します。


インストラクターとしては、ストレッチで柔軟性を保ちつつ、拮抗筋とのバランスを意識したトレーニングを行うことで、肩の健康とパフォーマンス向上に直結します。


是非肩甲下筋に注目してセッションを行なってみてください!

N.Pilates Seminar

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