今回はピラティスのセッションをする時にもよく遭遇する「坐骨神経痛」について解説していきます
坐骨神経痛って何?
坐骨神経はお尻にある大きな神経。
腰仙骨神経叢の主要な神経。
触診としては上後腸骨棘と坐骨結節を結んだ線のほぼ中央で坐骨結節と大転子の中間点のやや内側寄りを通過します。
筋肉の走行:起始はL4~S3で、脛骨神経と腓骨神経部枝分かれします。
この神経に何かしらの機械的なトラブルが起こると
- お尻が痛い
- 太ももの後ろが痛い
- ビリビリ痺れる
といったような症状を引き起こします。関連痛もあるので坐骨神経領域だけでなくお尻全体に痛みを引き起こします。
じゃあ坐骨神経にトラブルを起こす原因とは何でしょうか??
坐骨神経にトラブルを起こす要素
- 椎間板ヘルニア(ヘルニアが神経にダメージ)
- 脊柱管狭窄症(脊柱管が狭くなり神経にダメージ)
が主な器質的な要因です。
他にもすべり症、側弯症、脊椎炎、脊椎腫瘍、神経腫瘍、股関節疾患、骨盤外傷や婦人科や内臓疾患、鬱病、動脈硬化などの血管の病気が原因となることもあります。
病態は医師が判断しますが、
- 膀胱直腸障害
- 明らかな筋力低下
- 生活に支障がでるレベルの痛み
がある場合は速やかに病院にいってチェックしてもらいましょう!
じゃあ坐骨神経痛って何もすることできないの?
って話になりますが。そうではありません!
大きく分けて
- 椎間板ヘルニア姿勢の改善
- 脊柱管狭窄症の改善
- 各軟部組織の絞扼部位の改善
- 坐骨神経自体の伸張性の改善
になりますね!
器質的な問題でなければ7〜8割くらいは改善していきます!
椎間板ヘルニア姿勢の特徴
ヘルニア姿勢になりやすい人の特徴です。
・臀筋群がかたい
・ハムストリングスがかたい
・多裂筋の筋力低下
・腸腰筋の筋力低下
これらが重なってヘルニアが後方に飛び出てストレスが加わりやすくなります。つまりこの姿勢の改善がポイントになります。やることはすごくシンプル。相手の姿勢から筋肉の硬さ、弱い部分を見つけて→運動や徒手療法で改善!
シンプルシンプル!
しっかりと鍛えてあげましょう!
脊柱管狭窄症の特徴
骨盤が前傾で反り腰!!っていう教科書的な感じよりも。
圧倒的にSway backが多いです。
上半身が後方に残り、骨盤が前方に位置してカーブの急激な変化部分でストレスが加わってしまう。つまり猫背姿勢で縦にクシャっと潰れている姿勢の人が多いですね。
Sway backの方にはピラティスのニュートラルポジションの概念がめちゃくちゃ使えます。縦方向に伸びるように抗重力筋を鍛えてあげましょう!
ヘッドフォワードとかもしっかりと修正しましょう。
坐骨神経の通り道のパターン
坐骨神経の通り道はいくつかパターンがあります。
有名なのは
梨状筋の下を通るパターン(89%)
なのでほぼほぼこの形で覚えてもらってOK。(他には坐骨神経が梨状筋を貫く、坐骨神経が2本になって梨状筋を挟む場合など)
梨状筋の下を通った後に上・下双子、内閉鎖筋の上を坐骨神経が通ります。
つまり梨状筋と上・下双子、内閉鎖筋がサンドイッチして坐骨神経を圧迫します。
もしこれらの筋肉が問題であれば運動で症状を緩和することはできますよね?
ではどうやって判断するか?
よくなりそうな坐骨神経痛をどう見分けるか?
機能的な問題かどうかのチェックなので、理学初見のチェックが必要です。
・Freiberg test
・Pace test
・FAIR test
・梨状筋の触診(圧痛)
などから判断しましょう。つまり梨状筋周囲に伸長ストレスを加えて反応が出るかどうかですね!これらが要請の場合はストレッチやトレーニングでしっかりと反応を評価しましょう!
軟部組織に対するピラティス
坐骨神経痛に対する保存療法としては神経の滑走性の改善と神経除圧がポイントになります。
というわけでセルフケアでできるのは梨状筋のストレッチが有名ですね。ただ先ほど説明したように上・下双子筋と内閉鎖筋も神経絞扼に影響する筋肉。一緒にストレッチした方が良いですよね!
でもこれだけでも勿体無い。坐骨神経周囲の軟部組織のストレッチをしっかりと組み合わせましょう。
・梨状筋
・上双子、下双子筋
・内閉鎖筋
・大腿二頭筋
・大内転筋
・半腱様筋
・半膜様筋
上記の筋肉をまとめてストレッチしましょう!もし可能であれば徒手療法としてそれぞれの組織の間の滑走性をダイレクトに改善してあげましょう。
ストレッチによって筋の安静時の長さを長く保っておくことによって坐骨神経の圧迫を緩和させます。
5分間で合計7〜14ストレッチで20〜30秒間続くストレッチが、梨状筋の長さを30〜40%増加させる。股関節を115°の股関節屈曲、40°の外旋と内転の25°、または120°の股関節屈曲、50°の外旋と内転の30°の位置になると梨状筋が伸びる(M. Gulledge )
ただ。ストレッチだけじゃもったいないっす。
トレーニング・・というよりも滑走性を出した方が良いので。上記の筋肉を使った運動をしっかりとやりましょう!
坐骨神経痛に対するストレッチ
SLRを行うと坐骨神経と腰仙神経根にかなりのストレッチがかかります。
SLRによって椎間孔内の腰仙神経根は遠位に9-10mm動きます。でもね。遠位だけじゃないっす。神経は近位にも動きます。だから坐骨神経の領域の軟部組織を柔らかくしておくことは大事になります。
坐骨神経に対しての滑走性を改善するためにも。
神経をストレッチしましょう。
・足関節の背屈
・膝関節の伸展
・股関節の屈曲
・骨盤前傾、腰椎前弯
を組み合わせて痛みのない範囲で神経を徐々に伸ばしていきましょう!
神経自体は可動域の最初で緩みが無くなり、中間域で滑走して、最終域では滑走が減少して緊張します。
つまり中間域でしっかりと神経を滑走させて最終域では小さく神経を滑走させるのが効率的です!
ROMの神経系に対する効果はざっくりとこんな感じ↓
まとめ
というわけで
1病態を知る
2改善できそうな坐骨神経痛かどうか判断
3坐骨神経の問題となっている要因を特定
4問題となっている軟部組織のストレッチや神経の滑走性改善
が治療のポイントになりますね!
坐骨神経痛の方のピラティスの治療戦略に役立ててください。