内転筋の解剖学的特徴
内転筋を構成する筋肉は
- 恥骨筋
- 短内転筋
- 長内転筋
- 大内転筋
- 薄筋
以上の5つの筋肉があります。
これらの筋肉がそれぞれ「内転」の役割を担いますが個々にも機能があります。
インストラクターの皆さんはこの内転筋の特徴を理解していますか?
解剖の知識を理解していれば、
- どんなエクササイズが効果的で
- どんな代償動作が出やすいのか
まで考えることができます!
今回は内転筋を解剖から理解し、明日から使えるPointをお伝えしていきます!
内転筋の起始・停止
まずは内転筋群を構成する筋肉がどこについているのか確認しましょう!
【大内転筋】
- 起始:恥骨下枝、坐骨結節、坐骨枝
- 停止:大腿骨粗線内側唇、内転筋結節
- 作用:股関節内転・内旋・屈曲・伸展
【恥骨筋】
- 起始:恥骨上枝、恥骨櫛、恥骨靭帯
- 停止:恥骨筋線と粗線の近位部
- 作用:股関節内転・屈曲・内旋
【長内転筋】
- 起始:恥骨結合、恥骨結節
- 停止:大腿骨粗線内側唇中部1/3
- 作用:股関節内転・屈曲(股関節60°以上で伸展作用)
【短内転筋】
- 起始:恥骨下枝下部
- 停止:大腿骨粗線内側唇上部1/3
- 作用:股関節内転・屈曲
【薄筋】
- 起始:恥骨結合、恥骨
- 停止:脛骨内側面
- 作用:股関節内転・屈曲、膝関節屈曲、下腿内旋
ざっくりと覚えるポイントは
・内転筋は5つの筋肉から構成され、屈曲・伸展作用もある
・ほとんどの内転筋は恥骨から大腿骨に付着し、薄筋のみ膝関節をまたぐ二関節筋である
筋肉の付着部位がわかったところで次はそれぞれの筋肉の特徴を理解していきましょう!
大内転筋
内転筋群のなかで最も大きな筋肉であり内転運動時に最も活動します。
大内転筋の一番のポイントとして内転以外にも屈曲・伸展に作用します。
関節角度によって作用が異なり0°で内転作用が大きく、屈曲角度が深くなるにつれ伸展作用が強くなります。文献ではスクワットなどの運動ではハムストリングスよりも大きな伸展筋力を発揮すると言われています。
また、股関節外転筋(中臀筋や大腿筋膜張筋)と一緒に働くことで骨盤を安定させる筋肉になります。そのため歩行の立脚相で骨盤を安定させるのに重要な筋肉です。
スクワットのような左右対称性の抗重力動作では大内転筋の伸展トルクは大殿筋 大腿二頭筋長頭と同様に半膜様筋や半腱様筋よりも大きかった.
股関節肢位の変化に対して大内転筋が発揮する 股関節伸展トルクの特徴からみた役割 滝澤 恵美 1) 鈴木 雄太 2) 小林 育斗 3) https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/33/1/33_127/_pdf
中殿筋、大腿筋膜張筋は股関節外転作用を担っており同時に活動を示した大内転筋とは拮抗する作用を有する.拮抗関係にある筋が同時に活動を行うことを共収縮(co-contraction)と呼び,主働筋と拮抗筋が共収縮することにより関節を安定化する作用をもっている
Falconer and Winter, 1985)
長内転筋
長内転筋は内転筋の中で最も前方に位置しており、内転の他に屈曲作用があります。
しかし、股関節を60°以上曲げると股関節伸展の作用に切り替わります。
この特性から、歩行時に足の蹴り出しから足を前に振り出すときに働きます。
論文では、
長内転筋は全走速度を通じ股関節伸展位において活動を示し、大腿直筋との共働による股関節屈曲作用の特性を持ちます。
Dostal WF.Soderberg GL,Andrews JG:Actions of hip muscles.Phys There 1986;66:351-361
このような報告があります。
短内転筋
恥骨筋
恥骨筋は内転筋のなかで最も上部に位置しています。
恥骨筋は屈曲作用もあり、大腿骨が固定されている場合に骨盤を前傾させる作用ももちます。
そのため腹直筋(骨盤を後傾させる作用を持つ)と拮抗して働くことで骨盤を安定させます。
薄筋
薄筋は内転筋群の中で唯一膝関節をまたぐ二関節筋です。
膝の捻れがある場合この筋肉にストレスがかかりやすく膝の痛みの原因になりやすい筋肉の一つです。
実際に内転筋を触ってみよう!
内転筋の解剖を理解したところで、実際に触ってみましょう!
筋肉の起始・停止と走行がわかった上で、実際に筋肉を触ると筋肉をより詳しく理解することができます。
実際の体では、
- 皮膚の上から触れる必要がある
- 筋肉が何層にもなっており、直接触れられない筋肉がある
筋肉をいきなり触ろうと思っても人によって体の大きさや筋肉の大きさは異なります。
まずは骨を指標にすることがポイントです。
内転筋群は筋肉の停止部は異なりますが、起始部は全て骨盤の恥骨に付着しています。
恥骨は実際のクライアントに対して触りづらい部位でもあるため自分の体で確認してみましょう。
深層にあり触りづらい筋肉もあるため、まずは表層にある触りやすい筋肉を触り確認しましょう。
長内転筋
① 膝を立て、足を外に開く
② 内側の一番張っている筋が長内転筋です
③ 股関節内転運動に対して抵抗をかけ筋肉の収縮を確認しましょう
薄筋
薄筋は唯一膝関節をまたぐ筋肉なので脛骨内側から触ることでわかりやすいです
① 足を外に開き膝を伸ばしたときに脛骨の内側で触れます(短縮している場合膝が曲がってきます)
② 膝を伸ばしたまま股関節内転運動に対して抵抗をかけ筋肉の収縮を確認しましょう
大内転筋
① 大腿骨内側上顆を触り2〜3横指上の位置で大内転筋の腱がさわれます
② 股関節内転運動に対して抵抗をかけ筋肉の収縮を確認しましょう
下記ふたつの筋肉は触りづらいため大体の位置を把握できれば十分です。
恥骨筋
① 膝を立て、足を外に開く
② 鼠蹊部にある大腿動脈を触知する。その内側奥で筋腹を触知できます
③ 股関節内転・屈曲運動に対して抵抗をかけ筋肉の収縮を確認しましょう
短内転筋
① 膝を立て、足を外に開く
② 長内転筋の下方、大内転筋の上方に位置するためその間に指の腹を沈ませ触知できます
③ 股関節内転運動に対して抵抗をかけ筋肉の収縮を確認しましょう
内転筋のストレッチ方法
内転筋は弱い方が多くストレッチをした方が良い場合は少ないですが
・X脚
・恥骨周囲に痛みがある
・開排動作が硬い
これらに当てはまる方はストレッチを実践してみましょう!
おすすめのストレッチ方法をご紹介します!
腰が丸まったり猫背にならないように注意しましょう。
胸を張ったまま動かすことでより効果的に伸ばせます!
股関節の角度が変わることで内転筋を全体的にストレッチすることができます。
内転筋のエクササイズ方法
論文では、
中殿筋、大腿筋膜張筋は股関節外転作用を担っており同時に活動を示した大内転筋とは拮抗する作用を有する.主働筋と拮抗筋が共収縮することにより関節を安定化する作用をもっている
(Falconer and Winter, 1985)
とあります。
内転筋は骨盤をの水平を保つのに重要な役割があります。
そのため内転筋が弱いと
- 片脚立ちが不安定になる
- 外側の筋肉に頼った姿勢をとりやすくなる(太ももの外張り)
- O脚になる
という問題が起こりやすくなります。
内転筋はほとんどの方が弱いので鍛えることも大事です。
ですが、骨盤の安定を意識するなら外転筋と一緒に鍛えることでより歩行や姿勢の改善につながります!
そこでおすすめの
- 内転筋単独で鍛えるエクササイズ
- 中臀筋を一緒に働かせるエクササイズ
2つご紹介します。
肘で支える側の肩がすくまないように注意してみましょう。
頭から足が一直線になっているとgoodです!
最後に
解剖の知識があることは大きな武器です。
解剖を理解しているとエクササイズ指導の質もグッと上がります。
実際の触り方やコツなどが知りたい方は、こちらのセミナーがオススメです。
解剖の知識をつけて目の前の人をたくさん救っていきましょう!!