どうも!インストラクターの皆さん!本日も一緒に解剖の知識を学んでいきましょう。
今日は、肩甲骨まわりの安定に欠かせない「菱形筋」についてです。
前鋸筋はかなり注目されがちですが、同じぐらい菱形筋も大事なことをみなさんはご存知でしょうか?
菱形筋の解剖学的特徴

菱形筋は、肩甲骨の内側縁と背骨(脊柱)をつないでいる筋肉です。
菱形筋は小と大の2種類ありますが、運動指導での認識的としては、
とりあえずは2つまとめて菱形筋という認識でOKです笑。
主な働きは3つ:
- 肩甲骨を内側に引き寄せる(内転)
- 肩甲骨を少し上に引き上げる(挙上)
- 肩甲骨を安定させる
たとえば、
・良い姿勢で背筋を伸ばすとき
・ものを引く動作(ローイングなど)
で活躍しています。
インストラクター目線で特に注目したい働きとしては3の肩甲骨の安定作用です。
なぜならこの安定化作用のおかげで、私たちの肩甲骨はガタガタせず、背中はしなやかに、腕は自由に動かせるからです!
ちなみに、肩甲骨を安定化させる上で、前鋸筋と菱形筋は拮抗関係にあります
表で比較すると以下のような働きの違いがあります。
拮抗関係にあるところだけマークしたので確認してみてください!
項目 | 前鋸筋(ぜんきょきん) | 菱形筋(りょうけいきん) |
---|---|---|
主な作用 | 肩甲骨の外転・上方回旋 | 肩甲骨の内転・下方回旋 |
付着部 | 肋骨(第1〜9肋骨)→ 肩甲骨内側縁 | 頸椎・胸椎(棘突起)→ 肩甲骨内側縁 |
働く場面 | 腕を前に突き出す、プッシュアップ動作 | 姿勢保持、肩甲骨を引き寄せる動作 |
機能低下すると | 翼状肩甲(肩甲骨が浮く)、肩の不安定性 | 肩甲骨が外転・挙上しやすくなる、猫背姿勢 |
ピラティスでの意識 | 前鋸筋で「肩甲骨を胸郭に貼りつける」感覚 | 菱形筋で「背中の幅を感じる・内側に寄せる」 |
さらに、前鋸筋と菱形筋は筋の連結がある為、密接に関係し合っています。
前鋸筋編の復習にもなりますが、以下の図をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。

この筋連結+拮抗関係の綱引きは、どちらか一方の調子が悪くなるとバランスが崩壊し、肩甲帯に影響を与えてしまいます。
つまり、前鋸筋を意識するなら菱形筋もしっかり意識しなといけないということです!
菱形筋の起始停止
まずはしっかりとした起始・停止から。
小菱形筋
- 起始:第7頸椎〜第1胸椎の棘突起
- 停止:肩甲骨内側縁の上部(肩甲棘のあたり)
大菱形筋
- 起始:第2〜5胸椎の棘突起
- 停止:肩甲骨内側縁の下部(肩甲棘の下から下角あたり)
主な作用
動作 内容 肩甲骨の内転 肩甲骨を背骨方向に引き寄せる(肩を寄せる動作) 肩甲骨の軽度の挙上 肩甲骨をわずかに引き上げる 肩甲骨の下方回旋 腕を下げる動きで、肩甲骨の下角が内下方に動く 肩甲骨の安定 姿勢保持や上肢運動の際、肩甲骨を体幹に安定させる
情報量が多いですね笑
物凄くシンプルにズボラ起始停止&ズボラ作用で覚えるなら…
ズボラ起始停止:首から背中の上の方 → 肩甲骨の内側へガッチリくっつく
ズボラ作用:肩甲骨をキュッと背骨側へ引き寄せる筋肉!
まずはズボラで大体のイメージをしてから、ちゃんとしたバージョンを覚えるのがイメージを掴みやすいです!
菱形筋が硬くなるとどうなる?
菱形筋の現場で多いのが「背中がカチカチ」タイプ。
菱形筋が硬くなると、肩甲骨が内側に寄りすぎてしまって、動きがロックされやすくなります。
そして肩甲骨が過度に内転するとどうなるか?
- 肩甲骨が滑らかに動かなくなる
- 胸椎の回旋や伸展がしづらくなる。してるつもりでも腰椎伸展担っている事多い。
- 結果、胸椎のモビリティがダウン。
下は菱形筋の硬いパターンの典型姿勢です。

間違った良い姿勢を学習した運動好きの方に多い姿勢です。
一見胸が張れていて姿勢は良く見えるかもしれませんが、実は胸郭の動きが止まっていて呼吸も浅くなりがちなんです。
「反り腰」の方や、「スワンで背骨がうまく伸びない」といったクライアントがいたら、このパターンを疑ってみてください。
胸椎が硬くなりすぎると、上半身の動きに柔軟性を欠き、衝撃吸収能の低下や回旋動作の制限を招きます!
菱形筋が弱くなるとどうなる?
一方で、菱形筋が弱くなっている人はどうなるか?
肩甲骨をうまく寄せられない、つまり肩甲骨が外転して、下の画像の様に背中が丸くなってしまいます。

肩甲骨が翼状(ウィング)化
猫背・巻き肩
胸郭が閉じて呼吸が浅くなる
肩甲骨が安定しないことで、腕の動きが不安定に
ピラティスで「肩甲骨がついてこない」「スキャプラセットできない」という方は、菱形筋の弱化も視野に入れて観察してみましょう!
論文的には以下のように報告されています!参考にどうぞ!
■ 肩甲骨の外転・挙上位固定
大胸筋・前鋸筋の相対的な優位により、肩甲骨は外転・上方回旋しやすくなり、上肢挙上時のスキャプラハイキング(肩をすくめた動き)が出現します(Ludewig PM & Cook TM, 2000)。
■ 棘上筋・肩峰下圧迫リスクの増大
肩甲骨の安定性が低下すると、棘上筋腱・滑液包に対する圧迫ストレスが増加し、いわゆるインピンジメント症候群のリスクが高まると報告されています(Michener LA et al., 2003)。
参考文献
- Ludewig PM & Cook TM. Alterations in shoulder kinematics and associated muscle activity in people with symptoms of shoulder impingement. Phys Ther. 2000.
- Kibler WB et al. The role of the scapula in athletic shoulder function. Am J Sports Med. 2006.
菱形筋のエクササイズ
ここでは、ストレッチ1種、エクササイズ1種だけに絞って、シンプルに使えるものを紹介します!
運動初心者の方にもお勧めですのでぜひ実践してみてください。
ストレッチ:キャット&カウ
- 四つ這いで背中を丸めて、肩甲骨を外転方向へ誘導。
- 深い呼吸で、肩甲骨の内側が広がるのを感じましょう。
エクササイズ:ハンガーの挙上エクササイズ
- 動画ではピラティスリングを使用していますが、ハンガーでOK!
- ハンガーを使って、肩甲骨を安定させた状態での肩挙上動作。
- ポイントは「肩甲骨を動かさず肘で曲げ伸ばしする」イメージ。
- 肩甲骨を動かさないことで前鋸筋と菱形筋を効率的に賦活できます。
この2つだけでも、菱形筋の可動性と機能性がぐっと向上しますよ!
菱形筋のまとめ
菱形筋は、肩甲骨の位置と姿勢全体を支えるキープレイヤーです。
- 硬すぎると肩甲骨が内転位に偏位して反り腰の原因に。
- 弱すぎると肩甲骨が外転位に偏位して猫背に。
バランスよく、適切に働ける状態をつくることが、快適なピラティスムーブメントには欠かせません。
「なんとなく背中がうまく使えてないな…」と感じたら、ぜひ菱形筋に注目してみてください。
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肩甲骨エリアの理解が深まると、ピラティス指導がますます面白くなりますよ!