三角筋の解剖学〜ゼロからわかる解剖学〜

インストラクターの皆さんこんにちは!

本日は三角筋についての記事です!

三角筋は「肩を動かす筋肉」として広く知られていますが、その解剖学的構造や各線維の役割、隣接する筋との協調性まで正確に理解しているインストラクターは多くありません。

ピラティスの現場では、肩の安定性や可動性に関わる問題が頻繁に見られます。特に、ロールダウンやサイドプランクで肩が詰まる・落ちる・挙上するといった動きの背景には、三角筋のアンバランスや機能低下が潜んでいることも。

この記事では、三角筋の解剖学的特徴・起始停止・各線維の作用を再確認した上で、実際の指導場面でよく見られるエラーとその見立て方、さらにアプローチ方法やエクササイズ例も紹介します。

現場での観察力と介入の質を高めるヒントとして、ぜひ最後までご覧ください。

目次

まずはYoutubeで三角筋を学んで鍛える!

三角筋の解剖学的特徴を知ろう!

三角筋とはどんな筋肉?

「三角筋(deltoid muscle)は、肩関節の外側に位置し、三つの筋腹(前部・中部・後部)に分かれている厚みのある筋肉です。

筋腹の構造上、さまざまな方向の運動に関与できるのが大きな特徴であり、それぞれのパートが異なる動作に特化しています。

  • 前部線維:肩関節の屈曲と内旋
  • 中部線維:肩関節の外転(特に90°付近での主要作動筋)
  • 後部線維:肩関節の伸展と外旋

三角筋の停止部(上腕骨の三角筋粗面)は比較的狭い範囲であるにもかかわらず、起始が広いため扇状の構造となっており、複数の運動軸に対応できるデザインになっています。

解剖学的な重要性の一例

例えば、三角筋中部は肩関節の外転を担いますが、これは棘上筋が初動(0〜15°)を担った後にバトンを受け取るようにして動員されます。

この「作動筋のスイッチング」によって、肩の自然な動きが生まれます。

Kuechle DK et al., 2000
肩関節の外転動作における三角筋と棘上筋の筋電図活動から、初動は棘上筋、外転中〜終盤は三角筋中部が主導することが確認された。
[PMID: 11075326]

また、三角筋は腱板(ローテーターカフ)と異なり、関節のモビリティを担う筋肉です。しかし、その出力の強さが大きいため、腱板との協調性が損なわれると上腕骨頭の上方移動を招き、インピンジメントを引き起こすリスクがあります。

三角筋が肩を動かし、ローテーターカフがその動きを「関節内で安定化」させます。

❝動かす筋(モビリティ)と支える筋(スタビリティ)のバランスが取れて初めて、肩はスムーズに機能する❞

文献では以下のように報告されています!。

  • Howell SM et al., 1986
    → 三角筋による上腕骨頭の引き上げに対し、ローテーターカフが引き下げて関節中心を維持
    [PMID: 3700539]
  • McCully SP et al., 2007
    → 肩のダイナミックな安定には、三角筋と腱板筋群の同時協調的な筋活動が必要。
    [PMID: 17357750]

解剖学的ポイントまとめ

部位特徴主な作用
前部鎖骨外側から起こる屈曲・内旋
中部肩峰から起こる外転
後部肩甲棘から起こる伸展・外旋

構造的には、「動きのダイナミクスと方向性に富む筋肉」である一方、
周囲の安定化筋(とくにローテーターカフ)とのタイミングが非常に重要
ピラティスの動作の中では、このアクションとスタビリティの分業関係を理解することが大切です。


三角筋の起始・停止とは?

筋肉をイメージするのに、走行を知るのはとても大事なので起始停止の紹介です!

まずはきっちりとした起始停止から、

✔️きっちり解剖(医療従事者向け)

部位起始停止主な作用
前部鎖骨外側1/3上腕骨三角筋粗面屈曲・内旋
中部肩峰上腕骨三角筋粗面外転
後部肩甲棘上腕骨三角筋粗面伸展・外旋

こちらは専門職向けになります!

インストラクターの方は大まかな走行さえ抑えれば十分ですので下のズボラでOKデス。

✔️ズボラ解剖(インストラクター向け)

部位ズボラ起始ズボラ停止
前部鎖骨の端腕の外側
中部肩のてっぺん腕の外側
後部肩甲骨の背中側腕の外側

つまり、肩の3方向から上腕の外側につく、肩をぐるっと囲むような筋肉です。

大分こちらの方がわかりやすいですね笑

こんな感じでざっくり捉えてください!


三角筋が硬くなるとどうなる?

三角筋の過緊張は、可動域の制限と不快感だけでなく、肩甲骨や胸椎の連動性の低下にもつながります。

三角筋は物を持ち上げる時に働くアウターマッスル。

関節を安定させるのはあくまで補助時であるので得意ではありません

そのため硬くなりすぎると関節の動きを妨げたり、インナーの活動を邪魔して関節を不安定にしてしまう可能性もあります。

現場でよく見る兆候

  • 肩がすくんで、首に力が入ってしまう
  • 肩甲骨がピラティス種目のロールダウンやプッシュアップでロックされる
  • サイドプランクで肩が過剰にすくむ。肩の上方に痛みが出る

とくに後部線維の短縮は、肩甲骨の後傾を制限しやすく、胸椎伸展を妨げる要因にもなります。

ユーチューブの動画でも説明していた通り、デスクワーカーさんなども三角筋の過緊張状態になりやすいので

注意が必要です


三角筋が弱くなるとどうなる?

三角筋の筋力低下は、屈曲・外転・伸展の可動域低下や筋力低下に伴う他の筋群による代償を引き起こします。

筋力低下に伴う代償の一例としては

  • 僧帽筋の過活動 → 首こり、頭痛
  • ローテーターカフのオーバーワーク → 肩のインピンジメント
  • 手を挙げたときに、肩が前にズレるような感覚

などが出現します。

指導現場でよく見る兆候

  • 腕を横に挙げる動作で困難な為、肩が真上にすくませ、僧帽筋で代償する
  • 前部線維の出力が弱く、体幹と上肢のつながりが不安定になるプッシュアップで肩が過剰に内転位
  • サイドプランクで、肩が沈み、身体全体が斜めに崩れる。そもそも上がらない例も多々あり。

とくに中部〜後部線維の弱化は、肩の水平方向の安定性を低下させ、上腕が胴体から“浮く”ような不安定なフォームになりやすいです。

日常生活的には物を持ち上げる筋肉が弱化しているので重いものを上に上げることが困難なことが多いです。

エクササイズとストレッチ

【1】クロスストレッチ

  • 三角筋を線ごとに分けてのストレッチ。15秒キープが目安。
  • 肩前方に詰まり感出る場合はNG。上記ユーチューブに代替方法紹介しているので参照!
  • 体幹の回旋など体を捻らないように注意

【2】ダイヤモンドプッシュアップ/ピラティスエッセンス+

  • ダウンドッグ姿勢になり両手で三角形を作る。その姿勢で斜めに腕立て伏せ。
  • 三角筋のみならず、ローテーターカフ・僧帽筋下部中部・前鋸筋・菱形筋など肩周囲筋のアウターもインナーも    協調的に働かせる意識。
  • ダウンドッグ位なので腸腰筋の収縮も感じれれば◎。


まとめ

ピラティスの現場では、動作中に肩がすくむ・沈む・詰まるといったサインに注意し、三角筋とローテーターカフの出力バランスやタイミングに着目してみましょう。

アウターマッスルは物を持ち上げ、インナーマッスルは関節を安定させます。

このバランスが取れているからこそ、三角筋や僧帽筋などのアウターマッスルとして重量物を持ち上げる際に

肩に負担をかけることなく最大の出力を発揮できます。

動きの中で「使うべき筋肉を適切に使える」ようになることこそが、本質的な筋機能の再獲得です。

ぜひこの知識を、臨床現場やセッションに落とし込んでみてください!

参考文献・論文一覧

  • Howell SM et al., 1986
    The role of the supraspinatus and deltoid muscles in glenohumeral joint stability. [PMID: 3700539]
  • McCully SP et al., 2007
    Rotator cuff muscle activity and coactivation during shoulder abduction. [PMID: 17357750]
  • Yamamoto A et al., 2010
    Shoulder imbalance as a risk factor for rotator cuff tears. [PMID: 20619565]
  • Reinold MM et al., 2004
    Role of the scapula in the rehabilitation of shoulder injuries. [PMID: 15043176]

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