内腹斜筋は、体幹の安定性や腹圧調整に関わるインナーユニットの一員であり、外腹斜筋の深層に位置する重要な筋肉です。
ピラティスやリハビリの現場では、「深層筋としての使い方」が鍵になるため、外腹斜筋との違いや連携にも注目しながら見ていきましょう。
内腹斜筋の解剖学的特徴を知ろう!

内腹斜筋は、腹横筋と外腹斜筋の間に位置し、体幹の回旋・側屈・腹圧の調整などに関与しとります!
特に深層部での安定性を担う点が特徴です。
線維走行は「上内方(肋骨に向かって斜め上)」で、外腹斜筋とは逆方向に走るのでこの違いは必ず押さえておいてください。
この構造により、回旋時には左右交互に働きながら、トルクを生み出す機構となっています。
また、下部の線維は精巣挙筋(男性)や子宮円索(女性)とつながっており、骨盤底との連動も視野に入れた活用が必要です。
起始・停止(きっちり&ズボラver.)
ここからは筋肉の起始・停止をチェックしていきましょう!
まずは医療従事者さんや解剖マニア向けの「きっちりver」から解説していきます。
◎きっちりver
起始:
・鼠径靭帯(外側半分)
・腸骨稜(前2/3)
・胸腰筋膜(胸椎・腰椎の背中側を覆う膜)停止:
・第10〜12肋骨の下縁
・腹直筋鞘(前後葉)
・白線(linea alba)作用:
・体幹の側屈(同側に倒す)
・体幹の回旋(同側にひねる)
・体幹の屈曲(両側同時に収縮で前に曲げる)
・腹圧の調整・呼吸の補助(肋骨の引き下げを通して)
次はインストラクターさん向けの「ズボラver」!
走行のイメージだけざっくり掴みましょー!
◎ズボラver
起始:
骨盤の横やそけい部のあたり(腸骨・鼠径靭帯・背中の膜)から停止:
下の肋骨とお腹の真ん中ライン(白線)につながる作用:
・体を横に倒す
・体を同じ側にねじる
・お腹を前に曲げる
・呼吸やお腹の圧を支える
「どっちで覚えるか」はお好みでOK!
覚えやすい方で捉えてみましょう!
内腹斜筋の走行は、両手をポケットに入れるように「上内方」に斜め。
外腹斜筋が「手を反対側の胸に当てる」ような走行なのに対し、内腹斜筋は“お腹の内側で包むような動き”を作るイメージです。
また、腸骨稜〜胸腰筋膜〜肋骨という3点連結構造を理解すると、腰椎の支持や腹圧との関係が見えてきます。
硬いとどうなる?
内腹斜筋が過緊張している場合、特に下腹部まわりの動きや柔軟性に影響が出やすくなります。
主な症状や特徴:
- 下腹部が常にこわばっているような感覚
- 呼吸時にお腹が広がらず、深く吸いづらい
- 骨盤が前に引っ張られ、前傾姿勢になりやすい
- 体幹のひねり(同側回旋)が硬くなる
- 腹部の固定感が強く、自然な体幹のしなりが出づらい
内腹斜筋は骨盤の前面〜下部肋骨にかけて深層で走行しているため、
この筋が硬くなると、骨盤と肋骨を強く内側に引き寄せるようなパターンになりやすいのが特徴です。
見た目としては「お腹が締まって見える」こともありますが、実際には腹圧の抜け道がなくなり、横隔膜や骨盤底筋の動きも制限されてしまいます。
また、内腹斜筋は左右差が出やすい筋でもあるため、片側だけ過緊張していると骨盤の高さや体幹のねじれバランスが崩れやすくなります。
このような状態が続くと、腹直筋への依存が増えたり、呼吸の浅さ、慢性的な腰部〜下腹部のハリにつながることもあります。

弱いとどうなる?
内腹斜筋の機能低下は、主に以下のような問題を招きます
主な症状や特徴:
- コアの不安定感(特に側屈・回旋時)
- 腹圧コントロール不全(ドローインがうまくいかない)
- 外腹斜筋の代償的緊張
- 肋骨が前方に突出した「リブフレア」
- 股関節・腰部への過負荷
腹横筋とともに腹圧を支える機能を担っているため、内腹斜筋の弱化はインナーの力が抜けたような状態を生み、フォームの崩れや腰痛の要因にもなります。
よくある異常姿勢としては、骨盤の前傾が止められないことによる反り腰などです。

よくあるエラー例
エラー①:シングルレッグストレッチで骨盤がブレる
エラーの特徴:
脚を伸ばすたびに骨盤が左右にグラついたり、腰が反ったりする。
内腹斜筋が弱いため、骨盤の前面での保持が効かず、足の動きに体幹がついていってしまう。
原因:
これは内腹斜筋の骨盤の固定が甘いのが原因ですしっかり鍛える必要があります

エラー②:ロールアップで腹部が固まりすぎてスムーズに丸まれない
特徴:
下腹部に力が入りすぎ、肋骨と骨盤が“くっついたまま”になり、胸椎の柔らかいカールが出ない。
動きが「折れ曲がる」ようになってしまい、滑らかさを欠く。
原因:
内腹斜筋の過緊張により腹部が固定されすぎ、脊柱分節運動が阻害されています。
腹横筋と同様にインナーの一部ですが、ドローイン=内腹斜筋ではありません。
横隔膜や骨盤底筋との連動を意識せずに「引っ込める」動作だけを行うと、内腹斜筋の深層での機能は引き出せません。

ストレッチとエクササイズ
ストレッチ:ニーストレッチ
- 仰向けに寝て、膝を立てる
- 胸を天井に向けたまま、膝を横に倒す
→ 肋骨と骨盤の“間”が斜めに伸びている感覚があればOK!
エクササイズ:シッティングロール&ツイスト
- 体育座りスタート
- 両手を前に突き出し、上半身を鍛えたい側に回旋
- ゆっくりと骨盤から背骨を丸めながらロールダウン
- 耐えられるギリギリまできたらロールアップ
→ お腹を使っている感覚があればOK!
まとめ
内腹斜筋は「ただの脇腹の筋肉」ではなく、姿勢保持・腹圧調整・回旋・呼吸といった多面的な役割を担っています。
特に、外腹斜筋とのバランスや、腹横筋・骨盤底筋との連動が崩れると、フォーム不良や不調の原因になります。
レッスン現場では、「表層を締めるのではなく、深層で支える」感覚を丁寧に導いていくことが重要です。
内腹斜筋の活性化は、目に見えない分地味かもしれませんが、体幹の“真の安定”を育てる上で、欠かせない一手になるはずです。