腰方形筋の解剖学〜ゼロからわかる解剖学〜

反り腰や腰の違和感に深く関わる筋肉「腰方形筋(ようほうけいきん)」をご存知でしょうか?

「腰が片側だけ張る」
「片足立ちで骨盤がグラつく」
「左右のウエストのラインが違う気がする」

こうしたお悩みがあるとき、チェックすべき筋肉の一つが腰方形筋です。


腰方形筋は、腰椎の両側にある深層のインナーマッスルで、骨盤と肋骨、そして腰椎をつなぐ「腰の支柱」のような存在です。

姿勢保持、骨盤の左右バランス調整、呼吸の補助(第12肋骨を引き下げる)といった役割を担いながら、日常の動作や呼吸にまで関わる重要な筋肉です。


今日はこの腰方形筋について解説をしていきます!

目次

腰方形筋の解剖学的特徴を知ろう!

腰を支える外側の柱としての役割

腰方形筋は、体幹の真後ろにある脊柱起立筋とは異なり、体の側面に配置されています。

この位置関係が意味するのは──
「後ろから支える」よりも「左右から支える」筋肉だということ。

つまり、バランスをとる・横揺れを抑える・片足立ちを安定させる…そんな機能に大きく関与するのです。

だからこそ、腰痛予防や姿勢改善では縁の下の力持ちとして再注目されている筋肉なんですね。

脊柱起立筋がどっしり中央から支える筋肉なら、腰方形筋は外側から横の動きを抑える筋肉です!

ここのバランスが崩れると体幹の側方傾斜などが出現します。


腰方形筋は“3つの層”からできている?(マニア向け)

ここは解剖マニアさん向けへの紹介です!

興味がない方は読み飛ばしてOKです笑

一般的な解剖学書ではあまり紹介されませんが、実は腰方形筋には走行の異なる3つの線維束で構成されているという考え方があります。

  1. 腸肋部線維(iliocostal fibers)
     腸骨稜から第12肋骨へと走行。
     → 体幹の側屈・肋骨の引き下げに関与。
  2. 腸腰線維(iliolumbar fibers)
     腸骨稜から腰椎横突起へと走行。
     → 腰椎の安定性に関与。
  3. 腰肋線維(lumbocostal fibers)
     腰椎横突起から第12肋骨へと走行。
     → 肋骨のコントロール・呼吸補助にも影響。

このように線維の方向によって、姿勢制御、動作補助、呼吸への関与など、幅広い働きを持つのが特徴です!

体幹の安定と「呼吸」の関係

先ほども紹介したように、腰方形筋の上端は第12肋骨につながっています。


この肋骨は、いわゆる“浮遊肋骨”と呼ばれ、胸郭の下端に位置するフレキシブルな構造。

呼吸においては、吸気でこの肋骨が上がり、呼気で下がることで、肺の膨らみを助けています。

察しが良い方はこの時点でお気づきかもしれませんが、この腰方形筋実は呼吸にも関与します…笑

腰方形筋が過緊張すると、この第12肋骨の動きが制限され、「肋骨が動かない呼吸=浅い胸式呼吸」に偏ることも。


適度に柔軟性と張力があることで、

  • 肋骨の可動域を確保
  • 呼吸時の肋骨の「引き下げ」をアシスト
  • 横隔膜との連動性を高める

といった呼吸効率の向上にもつながっていきます。


起始・停止(きっちり&ズボラver.)

ここからいつも通り筋肉の起始停止を確認していきましょう!

まずは医療従事者や解剖マニア向けの起始停止から。

◎きっちりver

  • 起始:腸骨稜(posterior iliac crest)、腸腰靭帯(iliolumbar ligament)
  • 停止:第12肋骨の下縁、L1〜L4腰椎の肋骨突起(横突起)
  • 作用
    体幹の側屈(片側の筋収縮により、同側へ体幹を倒す)
    体幹の伸展(両側が同時に収縮することで腰椎を後方に反らす)
    骨盤の挙上(片側が縮むことで、同側の骨盤を持ち上げる)
    第12肋骨の安定・引き下げ(呼気時に肋骨の動きをコントロールし、胸郭の安定に貢献)


次はインスタラクターさん向けのズボラバージョン


走行のイメージだけざっくり掴みましょー!!

◎ズボラver

  • 起始:骨盤の一番上(腸骨)から
  • 停止:腰の背骨の横と、一番下の肋骨
  • 作用
    体を横に倒す
    腰を反らす
    背骨を横から支える

覚えやすい方で覚えてみましょう!

硬いとどうなる?

腰方形筋が硬くなった場合、以下のような影響が出やすくなります。

  • 骨盤の片側が引き上げられ、側弯様姿勢を作る
  • 反り腰の強調(前彎の増加)
  • 歩行時に腰の引っかかり感やだるさを感じる
  • 呼吸時に第12肋骨の可動性が低下し、浅い胸式呼吸に移行
  • 腰椎の可動性低下とともに、椎間関節にストレスが集中

特に、長時間座位・片脚荷重姿勢・運動不足などにより慢性的に硬くなるケースが多く、腰痛との関連も深いです【McGill, 2007】【Hides et al., 2001】。


要するに、
腰回りの動きを制限したり呼吸が浅くなるよーってことです!


弱いとどうなる?

一方で、腰方形筋が弱化すると、以下のような現象が起こります。

  • 片足立ちや階段昇降時に骨盤が傾く
  • サイドプランクや側屈エクササイズで姿勢が崩れる
  • 歩行中、腰が左右に揺れる「トレンデレンブルグ様歩行」
  • 腰部の筋肉(多裂筋や脊柱起立筋)に代償負荷がかかる

特に高齢者や長期間運動習慣がない人では、腰方形筋の筋力低下によりバランス能力が著しく低下する傾向が報告されています【Granacher et al., 2014】。


要するに、
弱くなると背骨の横の動きを止められなくなるよーってことです!

よくあるエラー例

腰方形筋がうまく働かない、または過剰に働いていることで見られるエラー動作を挙げます。

ロールダウンで腰が反る

腰方形筋の柔軟性が低いと腰を丸める(腰椎を屈曲)することができなくて、腰を反ってしまうエラーがよくあります。

この例はとにかくストレッチ必須です!


この例は、腰方形筋が柔らかくなることにより背中が丸めやすくなることが多いです。

サイドプランクで骨盤が落ちる

下側の骨盤を引き上げられないので、サイドプランク時に下側が落ちたフォームに仕上がります。

この例は、下側の腰方形筋の側屈作用を鍛えてあげる必要があります!


とにかく収縮感を養うのが大事です。

マーメイドエクササイズでお尻が浮く

腰方形筋のストレッチ種目でもあるマーメイドですが、

腰方形筋の硬さに引っ張られたままエクササイズを行うと、骨盤が上に引き上げられて、

お尻が浮いてしまうエラーが出現します!

腰方形筋が硬いので引っ張り上げてしまうんです


なので、しっかり骨盤を固定する意識が大事です。


そうしないと狙いの腰方形筋が伸びてこないデス…。


ストレッチとエクササイズ

ここからは具体的な解決策について解説していきます!

ここまで読んだ中の症状で、クライアントやあなた自身に当てはまるものがありましたら、

是非トライしてみてください!!


▶ ストレッチ

サイドリーチ( 立位)

  1. 足をクロスして壁に立つ
  2. 片手を頭上に上げ、体を反対側に倒す

※ポイント:骨盤を横に突き出す様にすると、側方のラテラルラインの伸び感高まります!


▶ エクササイズ

サイドプランク with リーチ

  1. 膝をついたサイドプランク姿勢をとる
  2. 上側の腕を頭上へ伸ばしながら骨盤を持ち上げる

※ポイント:上側の手で体感側屈を誘導しながら、下の腰方形筋の収縮を促すのが狙いです。


まとめ

腰方形筋は、表には出にくい“縁の下の力持ち”ですが、その影響力は非常に大きく、

  • 姿勢バランスの土台
  • 骨盤安定性のコントロール
  • 呼吸と体幹のつながり
  • 腰部疾患の予防と改善

といった多岐にわたる領域で、重要な役割を果たしています。

単なる腰の深部の筋としてではなく、「姿勢・呼吸・左右バランスのキープ力」として捉えることで、より効果的な評価・アプローチが可能となります!

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