大腿筋膜張筋の解剖学〜ゼロからわかる解剖学〜

目次

大腿筋膜張筋の解剖学的特徴

大腿筋膜張筋は、股関節の外側についている筋肉です。

この筋肉は、腸脛靭帯という太ももを外側から支える大きな靭帯に付着しています。

この筋肉が硬くなる・弱くなっていると、

・股関節が痛む

・骨盤が固定され、腰痛につながる

・太ももの外側が張る

・太ももが疲れやすくなる

といった不調を引き起こします。

論文でも、

・片脚立位時に主に活動する股関節外転筋は、大殿筋・中殿筋・大腿筋膜張筋である(1)。

・大腿筋膜張筋や中殿筋の筋活動の低下により,立位時の前額面の重心動揺の増大と代償とした脊柱起立筋の活動が増大する(2) 

(1)山嵜勉:整形外科理学療法の理論と技術.メジカル ビュー社,1995(2)Salavati M 2007

大腿筋膜張筋はお尻の筋肉と共に、バランスをとるために重要な筋肉です。

それらの筋肉が働かないと、腰や背中の筋肉が過度に使われ、腰痛などにもつながる可能性があります。

では、インストラクターの皆さんはこの大腿筋膜張筋がどこにあって、どんな働きがあるかを理解していますか?

解剖の知識を理解していれば、

  • どんなエクササイズが効果的で
  • どんな代償動作が出やすいのか

まで考えることができます!

今回は大腿筋膜張筋を解剖から理解し、明日から使えるPointをお伝えしていきます!

大腿筋膜張筋の起始停止は?

まずは、大腿筋膜張筋がどこについているかを確認しましょう!

【起始】

上前腸骨棘(ASIS)

【停止】

大腿筋膜となって、Gerdy結節

作用:股関節外転、内旋

です!

ザックリお伝えすると、大腿筋膜張筋は骨盤からすねの外側につきます!

大腿筋膜張筋自体は小さな筋肉ですが、途中で腸脛靭帯と合流して膝まで続きます。

そのため、この筋肉に不具合が生じると大腿筋膜へ負担がかかることは予測しやすいですね。

この腸脛靭帯は、外側から体を支えてくれています。

ですが、体の使い方によって不調が起きやすい組織でもあります。

例えば、普段この姿勢をとっている人多いのではないでしょうか?

この姿勢は、腸脛靭帯に頼った姿勢です。

靭帯の張力に頼って立てるため、楽に感じる人も多いと思います。

しかし、この姿勢では腸脛靭帯に頼るため、痛みや大腿筋膜張筋の筋力低下を引き起こしてしまいます。

大腿筋膜張筋の活動は、股関節内転位による腸脛靭帯の張力増大によって抑制される

Tateuchi H et al, 2015

そのため、大腿筋膜張筋を適切に使い、姿勢を安定させることが重要です。

実際に大腿筋膜張筋に触ってみよう!

大腿筋膜張筋の解剖を理解したところで、実際に触ってみましょう!

筋肉の起始・停止と走行がわかった上で、実際に筋肉を触ると筋肉をより詳しく理解することができます。

実際の体では、

  • 皮膚の上から触れる必要がある
  • 筋肉が何層にもなっており、直接触れられない筋肉がある

筋肉をいきなり触ろうと思っても人によって体の大きさや筋肉の大きさは異なります。

まずは骨を指標にすることがポイントです。

今回の大腿筋膜張筋では、骨盤の上前腸骨棘(以下ASIS)を指標にすることで、筋肉の位置関係を把握しやすくなります!

まずは、上前腸骨棘を触りましょう!

そこから指1〜2本分足側に指を置きます。

股関節を曲げたまま、上に上げると(屈曲・外転)動く筋肉が大腿筋膜張筋です!

次に大腿筋膜張筋が付着する腸脛靭帯も触っていきましょう!

まずは、膝の外側を触ります。

股関節を閉じると、腸脛靭帯が伸ばされるため靭帯がわかりやすくなります。

パツッと張っているのがわかりやすいので、簡単に触れます!

大腿筋膜張筋のストレッチ方法

・腰痛がある

・太ももの外側が張る

・太ももが疲れやすくなる

このような症状がある方は、大腿筋膜張筋のストレッチをしましょう!

大腿筋膜張筋についている腸脛靭帯は、張っている状態が続くと痛みやすい組織です。

論文では、

ストレッチング前後における ITB(腸脛靭帯) の硬度の定量化を試みた。ITB の硬度は遠位になるほど 高い傾向があったが,全ての部位で TFL (大腿筋膜張筋)のストレッチングにより有意に低下した。

大腿筋膜張筋の静的ストレッチングが腸脛靭帯の硬度に与える影響(堤ら、2016)

大腿筋膜張筋をストレッチすることで、腸脛靭帯の硬さも改善しやすいです。

おすすめのストレッチ方法はこんな感じです。

体の外側を全体的に伸ばしましょう!

姿勢が崩れていると、伸び感は軽減してしまいます。

猫背や反り腰のままやらないように注意しましょう!

大腿筋膜張筋のエクササイズ

次は大腿筋膜張筋のエクササイズをご紹介します!

大腿筋膜張筋は外側から体を支える働きがあります。

ですが、大腿筋膜張筋ばかりを使うことはおすすめできません。

理由としては、腸脛靭帯に過度な負担がかかる可能性があるから。

外側から体を支える筋肉はお尻の筋肉が中心です(大臀筋や中臀筋など)。

なので、お尻の筋肉と一緒に鍛えることが重要です!

今回はおすすめのエクササイズを2つやってみましょう!

サイドブリッジです。

体幹を安定させた状態で、お尻や大腿筋膜張筋を鍛えていきます。

手は肩の真下に置くようにしましょう!

・肩がすくむ

・姿勢が崩れる(お尻が出ている、腰が反っているなど)

場合は、代償動作ですのでお尻や大腿筋膜張筋に効いていない可能性が高いです。

姿勢を確認しながらやってみましょう!

次は立位でのエクササイズです。

立脚側の筋肉を鍛えます!

骨盤を水平に維持することで、よりお尻や大腿筋膜張筋を使うことができます。

また、矢状面上(横から)の姿勢も重要です。

骨盤後傾位では大腿筋膜張筋が活動しやすい環境におかれ、結果として股関節外転筋活動に不均衡を生じる。

多関節運動連鎖からみた変形性関節症の保存療法(井原ら 2010)

骨盤が後傾していると、お尻の筋肉が働きにくく大腿筋膜張筋に負担がかかりやすいです。

立位では、お尻の筋肉と共に使うことが重要なので、過度な骨盤後傾には注意しましょう!

最後に

解剖の知識があることは大きな武器です。

解剖を理解しているとエクササイズ指導の質もグッと上がります。

実際の触り方やコツなどが知りたい方は、ゼロからわかる解剖学セミナーで待っています!

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