椎前筋の解剖学〜ゼロからわかる解剖学〜

目次

椎前筋の解剖学的特徴を知ろう!

椎前筋とはどんな筋肉?

Thanks to @visiblebody

まず「椎前筋(ついぜんきん)」という名前を聞いたことがありますか?

この筋肉は、頸椎(首の骨)の前側に位置する深層筋で、首のインナーマッスルとして非常に重要な役割を担っています。

椎前筋は以下の四つの筋で構成されています!

筋名読み方はたらきひとことで言うと?
長頚筋ちょうけいきん首を前に曲げる、安定させる首の奥の支柱
長頭筋ちょうとうきん頭を前に倒す、微調整するあたまの土台
前頭直筋ぜんとうちょっきん小さくうなずく動きをサポートうなずき筋
外側頭直筋がいそくとうちょっきん頭を少し横に傾ける首かしげ筋

インストラクターの指導現場でこの筋肉1つ1つを個別に意識してレッスン指導することはあまりないので、

菱形筋編と同様に4つまとめて椎前筋ぐらいに覚えておくと良いかもしれません!

この筋肉が弱化していると具体的には

  • 首が前に出やすい(ストレートネック)
  • デスクワークで首肩が常に重い
  • ピラティス中に「首がきつい」と訴える

といった問題が起こりやすくなります!

以下のような研究報告もあります。

首の深層筋が適切に働くことで、頭部の安定性が確保され、頸椎への負荷が減少する。 Jull G, 2004

また、

慢性頸部痛のある被験者では、椎前筋の筋厚と活動が有意に低下していた。 Falla D et al., 2003

という報告もあり、椎前筋の働きは頸部の不調と密接に関係していることが示されています!

椎前筋と他の筋肉の協調性

椎椎前筋は単体で働くわけではありません。

頚部の安定性を保つためには、以下の筋肉との協調が不可欠です!

  • 斜角筋群(前・中・後):呼吸補助筋でありつつ、頚椎側屈や安定に寄与
  • 胸鎖乳突筋:過緊張しやすい表層筋。椎前筋が弱いと代償的に過活動となる

これらの筋との協調が崩れると、椎前筋の活性化が困難になり、代償動作が生じやすくなります。

特にフィードフォワード制御(運動前に先行して筋活動が起こる制御機構)は重要であり、安定化が必要な状況で最初に椎前筋が働くことが確認されています(Hodges 1997)。

椎前筋の起始・停止とは?

まずはきっちりとした起始停止から!

椎前筋4つの筋肉

椎前筋は大きく4つに分けることができます!

筋名起始停止主な作用
長頚筋C5〜T3の椎体・横突起C1前結節、C2〜C4椎体前面、C5〜C6横突起頚椎の屈曲・軽度の回旋と側屈
長頭筋C3〜C6の横突起後頭骨の斜台部(basiocciput)頭部の屈曲(うなずき動作)
前頭直筋C1の前弓と横突起後頭骨底部(内側)頭部の微細な屈曲
外側頭直筋C1の横突起後頭骨の頸静脈突起付近頭部の同側側屈

医療系の方は上で覚えてみましょう!笑

インストラクターさんは下のズボラ版がおすすめです!

筋名ズボラ起始ズボラ停止
長頚筋首の下の方(頸椎・胸椎)首の真ん中あたり
長頭筋首の横(頸椎の横)頭の下(後頭骨)
前頭直筋首の一番上の骨(環椎)頭の底の前側
外側頭直筋環椎の横頭の横の下あたり

ズボラ版にすると先ほどより覚えやすいですが、まだ覚えるのが4つもあるので大変ですね笑

指導現場ではほぼ個別に意識させることはないので、まとめて椎前筋で覚えても良いかもしれません!

つまり、

【ズボラ起始】

  • 胸椎の前(首の奥の骨)

【ズボラ停止】

  • 頭蓋骨の下のほう(後頭骨の内側)

【ズボラ作用】

  • あごを軽く引いて、頭をまっすぐ支えるための、首の奥の筋肉

これぐらいの認識でOKです!

まずは単純に解剖を理解しましょう!

椎前筋が硬いとどうなる?

椎前筋は筋膜ラインのディープフロントライン(深層筋膜)の一部です。

ここが硬くなると、

  • 筋膜ラインで接続している横隔膜・骨盤底筋の動きにも影響し、腹圧にも影響
  • 腰椎〜骨盤〜股関節の連動性が崩れ、代償的に脊柱起立筋が過緊張しやすい
  • 結果、腰痛・股関節の不安定感を訴えるケースも

つまり、頚部が前に出てしまう人は腹圧が入りにくい為、

エクササイズ時の腹部の収縮感や腹圧の高まりを得られにくくなる可能性があります…。

腹筋が弱いから腹部が入らないのかと思いきや

頚部のポジション不良による影響の可能性も指導現場で考えてみると非常に面白いかなと思います!。♾

椎前筋が弱いとどうなる?

椎前筋が弱くなると頚部が不安定になり、以下の症状が出現します。

1. 頚椎の前方支持が失われる
椎前筋は、頚椎の前面から頭部を内側から支える「深層安定筋」です。
この筋が弱くなると、頚椎前方の支持力が低下し、頭部が前方へ滑り出すようにズレていきやすくなります。

2. ストレートネックの進行を助長する
本来、頚椎には生理的な前弯があり、これがクッションの役割を果たしています。
しかし椎前筋の機能が低下すると、この前弯が失われやすくなり、ストレートネック(あるいは逆カーブ)が形成・悪化します。



3. 代償的に胸鎖乳突筋と斜角筋が過活動になる
椎前筋が弱いと、頭部を支える役目を**胸鎖乳突筋(SCM)や斜角筋(前・中・後)**が代償的に担うようになります。
これにより:
胸鎖乳突筋の過緊張
 → 頭痛、首の前面のつっぱり感、顔のむくみ、顎関節の不安定など
斜角筋の硬化
 → 肩こり、腕への放散痛(胸郭出口症候群的症状)、呼吸が浅くなる
これらは、いずれも姿勢保持に表層筋が使われすぎることによる二次的な不調です。

椎前筋のエクササイズ方法

ここからは椎前筋のセルフエクササイズを紹介します!

椎前を鍛えることで頚部を後方に引き込める様になります。

この引き込んだポジションを習得することにより、

筋膜ラインの活性化により腹部の収縮感を得られやすくなったりストレートネックの予防にもなります。

【1】立位でのチンインエクササイズ

方法:

  • 仰向けで寝て、軽く顎を引く
  • 頭を持ち上げず「のどの奥を後ろに引く」ように動かす
  • 10回ゆっくり繰り返す

注意点:

  • 僧帽筋や胸鎖乳突筋を使わず、首の奥を意識
  • お腹ではなく“喉の奥”で支える感覚をつかむ

【2】スワンダイブ・ボール修正

方法:

  • 胸の下にボールをセット
  • 胸でボールを押しながら顎を引き込む
  • 5〜10秒キープ × 5回

注意点:

  • 首だけ上に上げない
  • 首の“奥の芯”で頭を支える意識

追加エビデンス:他の研究報告

他にも色々研究報告があったのでこちらもシェアします。

参考にどうぞ〜!

Deep cervical flexor training improved postural stability and decreased pain in patients with chronic neck pain.

→深部頚部屈筋のトレーニングは、慢性頚部痛のある患者において姿勢の安定性を向上させ、痛みを軽減させた。

  • Lee H et al., 2007

Cervical flexor muscle performance was found to be lower in individuals with cervicogenic headache.

→頚性頭痛のある人では、頚部屈筋の筋機能が低下していることが確認された。

  • Watson & Trott, 1993

Altered muscle activation patterns in the cervical flexors contribute to forward head posture.

→頚部屈筋の筋活動パターンの変化は、頭部前方偏位(ストレートネック)の要因となる。

  • Szeto GPY et al., 2005

これらの文献も、椎前筋の機能不全が首や姿勢に与える影響を明確に示していまーす。

最後に

「椎前筋」はピラティスの動きや日常姿勢において、とても重要な“首の深層インナーユニット”です。

見えない筋肉ですが、ここが使えるようになると全身の連動が格段にスムーズになります。

ぜひ、普段のレッスンやセルフエクササイズにも取り入れてみてください!

下記は頚部の関連動画になりますので、お時間がある方は是非こちらもチェックしてみてください!


参考文献

  • Falla D et al., Activation of deep cervical flexor muscles during training exercises in patients with neck pain. Spine. 2003.
  • Jull G et al., Cervical muscle dysfunction in neck pain. Man Ther. 2004.
  • Lee H et al., Effect of deep cervical flexor training on postural stability and pain in chronic neck pain patients. Manual Therapy. 2007.
  • Watson & Trott, Cervical headache: an investigation of natural head posture and upper cervical flexor muscle performance. Cephalalgia. 1993.
  • Szeto GPY et al., The relationship between neck muscle activity and forward head posture. Pain Research & Management. 2005.

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