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ロールオーバーができない理由を解剖学から

ロールオーバーはクラシカルピラティスの中でも高度なマットエクササイズ。
脚を持ち上げ、背骨を一つずつコントロールしながら後方へロールしていくこの動きは、
柔軟性・体幹安定性・背骨分節のコントロールが同時に求められる難易度の高い課題です。
現場でよく聞く悩みは…
- 脚が床方向まで降りてこない
- 腰で一気に持ち上げてしまう
- 首や肩に力が入ってしまう
- 背骨がゴソっと塊で動いてしまう
これらには共通する「解剖学的な背景」があります。
ここでは5つの要因を分けて解説し、改善の糸口を示していきます。
理由1:脊柱屈曲可動域の不足
脊柱屈曲の役割
ロールオーバーは背骨を一つずつ屈曲させ、
順に床から離していく「分節的な動き」が求められます。
胸椎・腰椎の屈曲がスムーズに出ることが、動きの美しさと安全性につながります。
制限があるとどうなる?
腰椎屈曲が硬い場合、
腰を反動で持ち上げる動きになりやすく、
頸部や肩に過剰な負担がかかります。
また胸椎の可動域不足は「塊で持ち上がる」原因となり、
分節性が失われます。
改善のステップ
おすすめは、
キャットアンドカウで脊柱屈曲を練習してみましょう!
キャットアンドカウは、
体幹屈曲をさせることにより、相反抑制の働きで、
反対側の腰背部の柔軟性も拡大するので単純なストレッチよりも効果2倍です!
理由2:ハムストリングスと股関節屈筋群の柔軟性不足
役割
ロールオーバーでは脚を垂直に持ち上げ、
さらに頭方向へ送り込むためにハムストリングスの柔軟性が必須です!
加えて腸腰筋の柔軟性が足りないと、
骨盤が引っ張られて正しい軌道を描けません。

制限があるとどうなる?
ハムストリングスが硬いと、
脚が90°以上に上がらず、
ロールオーバーのスタートが困難になります。
結果として腰で無理に動きを作るため、
代償性の腰痛や頸部負担が増加します。
改善のステップ
リングを使用したハムストリングスストレッチで柔軟性を確保し、
股関節から脚を動かす感覚を養いましょう。
理由3:腹筋群のコントロール不足
腹筋群の役割
ロールオーバーでは、
腹直筋の強さだけでなく、
腹横筋による体幹の引き込みと腹圧コントロールが欠かせません。
これにより、脚を持ち上げるときに腰を守りながら、
背骨を順に丸められるのです。
弱いとどうなる?
腹筋が弱いと、
脚の重さに耐えられず腰を反って脚を持ち上げる代償が出ます。
また、腹横筋が働かないと、
腹部が前に押し出されて体幹の内圧が抜け、
スムーズな屈曲ができなくなります。
改善のステップ
ローリングライクアボールなどで、
腹部を引き込んだ状況での腰椎屈曲のコントロール
を学習してみましょう!
理由4:腸腰筋の出力不足
腸腰筋の役割
ロールオーバーでは、
脚をコントロールして後方へ運ぶ際に、
腸腰筋が重要な役割を果たします。
腸腰筋は大腰筋と腸骨筋から構成され、股関節屈曲を担うだけでなく、腰椎の安定化にも寄与します(Neumann, 2017)。
特にロールオーバーの脚を上げる軌道が、
低くなりやすいです!
弱いとどうなる?
腸腰筋の出力が不足すると、
脚をスムーズにコントロールできず、
代償的に腹直筋や頸部屈筋群が過剰に働きます。
その結果、
頚部〜腹部で引き込む為、
ロールオーバーの持ち上げ動作の足の軌道が低くなってしまいます。
改善のステップ
腸腰筋の出力を高めるためには、
まず股関節屈曲を骨盤安定下で行う感覚を養うことが大切です。
たとえばテーブルトップポジションで、
腰椎をニュートラルに保ちながら脚をコントロールする練習が有効です。
さらに、
呼吸と連動させて腸腰筋を使う意識を持つことで、
頸部や腹直筋に頼らない動きが獲得できます。
理由5:分節運動の運動学習不足
分節運動の重要性
ロールオーバーの最大のポイントは、
背骨をひとつずつ順に動かすことです。
これは筋力や柔軟性だけでなく「運動学習=脳と神経系のコントロール」が不可欠です。
脊柱の柔軟性ありきで、
しっかり背骨を一つずつ使う感覚を養う必要性があります!
不足しているとどうなる?
十分な運動学習がないと、
背骨を塊で動かすパターンに頼ってしまい、
「丸く滑らかな動き」が失われます。
クライアントは「一気に持ち上げて一気に降ろす」動きになりがちです。
改善のステップ
おすすめはショルダーブリッジです!
ただ行うのではなく、ゆっくりショルダーブリッジを行ってください!!
素早い動きだと、外側の大きなアウターマッスル(広背筋や脊柱起立筋)が入ってしまい、
多裂筋などのインナーマッスルでの分節的なコントロールを阻害します。
分節的な運動には、
多裂筋などの背骨一つ一つに細かく停止している筋肉の出力が必要不可欠です!
ロールオーバーができない!を解決するまとめ!
ロールオーバーができない背景には、
- 脊柱屈曲可動域の不足
- ハムストリングスと股関節屈筋群の柔軟性不足
- 腹筋群のコントロール不足
- 腸腰筋の出力不足
- 分節運動の運動学習不足
これら5つが関わっています。
改善のカギは、
「一気に動く」ではなく「分けて動く」学習を取り入れること。
インストラクターは、
- 背骨がひとつずつ床から離れているか
- 腹部が引き込まれているか
- 首や肩に力が入っていないか
を丁寧に観察し、段階的に修正していくことが求められます。
ロールオーバーは「できるかできないか」ではなく、
「どこでつまずいているか」を明確にすることが指導の第一歩です。